第7話

 僕の放送事故から早いことでもう3ヶ月。

 僕はあれ以来動画を投稿していなかった。うん。投稿なんて出来たものじゃないよね。うん。

 もう動画投稿サイトすら開いていない。

 ……僕は口座を見て腰を抜かしたよ。


 ピンポーン

 

 突然。

 突然家のチャイムが鳴った。


「和葉かな?」

 

 僕は買い物に出かけていた和葉が家に帰ってきたのだと思い、玄関の扉を開ける。


「え?」

 

 僕が玄関に立っていた女性たちを見て動きをピタリと止める。

 その女性たちはなんかカッコいいサングラスをかけたスーツ姿。

 と、逃走中?


「あなたが賢人さんですね?」

 

 僕は後ろに跳躍。

 彼女たちから僕への敵意を感じたからだ。


「待ちなさい!」

 

 女性たちは機敏な動きで僕を追いかけてくる。

 ……政府の人間かな。

 敵意は感じても欲情は感じない。そんなのただの強盗じゃない。おそらく政府の人間だろう。

 ……僕が悪いけど!ここで捕まるわけにはいかないよ!?殺されたくないよ!?

 和葉が来るまで耐えればいい。その後は海外逃亡しよう。和葉なら僕を抱えて太平洋を走って横断出来るだろう。

 

「ふっ、ほっ、や」

 

 僕に向かって伸びてくる女性たちの手を避けていく。

 やっぱり。この人達は統制が取れた人間だ。それ故に、彼女たちにはこの世界の女性たち特有の人間の限界を越えた力はない。

 これならなんとかなるかもしれない。


「すっ!」


「やぁ!」 

 

 最初は捕まえようと手を伸ばしてきただけでだったが、途中から殴る蹴るの暴力に変わっていく。

 ちょ、物理的に気絶させようとしてこないで!?

 僕は一瞬の隙を狙って横蹴りを放ち、一人の女性を吹き飛ばす。


「嘘っ!?」

 

 その後流れるように足を滑らせ、蹴り飛ばした女性の隣に立っていた女性に足払いを決める。


「せいやぁ!」

 

 女性の横払いの手刀をしゃがんで避け、転ばせた女性の首根っこを掴み後ずさる。

 僕は後ろから覆いかぶさるように抱きしめる。

 

「あぁん!?」

 


 僕は女性を弄り、ある硬いものを掴む。

 

 取り出したのは拳銃。鉄がひんやりとしていて冷たい。


「……っ!」

 

 僕は拳銃を女性たちに向けた。ちゃんと撃てる状態にして。




「ハァハァハァハァ」

 

 

 

 膠着し、静まりかえったこの場に荒い息が響く。

 僕は頬を引きつらせる。


「男ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「あが!?」

 

 とんでもない力が僕に向けられる。

 僕の小さな体の中にいた体の大きな女性が僕を跳ね除けることくらい簡単だった。

 僕は簡単に下に組み伏せられた。

 180cm以上ありそうな女性はハートにした目を僕に向けてくる。



「ひっ!?」

 

 僕は思わず悲鳴を上げ、拳銃を手から落としてしまう。


「そこまでだ!」

 

 他の女性たちがその女性を僕から引き剥がす。

 そして、女性たちは僕の口元に布を押し付けてきた。

 

 視界が暗転する。

 

 意識が朦朧とする。

 

 落ちていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る