第22話

「そこ、敵の攻撃が来るから対処ね」


「回復頂戴」


「理沙に回復上げてあげて」

 

 僕は一人寂しく言葉を告げる。 

 結局。

 どれだけ頑張っても彼女たちが僕の声に慣れることはなかった。

 どれほど頑張っても霧音は発狂する。話すことが出来たかも!って思ったその10分後には叫ぶとかいう末期。

 愛梨は天然なのか知らないが唐突にとんでもないことを言って場を乱し、鈴鹿はなんか怖い。

 そして、理沙はドMに覚醒した。

 なんか時折くちゅくちゅという水の音も聞こえてくるのだ。

 これ以上はどんなに頑張っても無理だろうと判断した僕は喋るのをやめようとしたのだが、それに対し四人は大反対。

 話し合い、いやあれはそんな生易しいものじゃない。

 本能のぶつけ合い、人本来の闘争の末、結果的に僕が司令官として一人話すことが決定した。

 その代わりに僕の声に聞き入るあまりプレイに集中出来ていなさそうなら辞めるという条件を言ったら、みんなびっくりするくらいにPSが向上した。

 ……彼女たちは片手でどうやってプレイを頑張っているのだろうか?

 彼女たちが片手でプレイしている理由は語るまでもないだろう、と心のなかで誰に言うわけでもなく誰かに話している風なことを考えてみたり。

 この世界の女性はやっぱりすごい。 

 常識を軽々と越えてきてくれる。

 和葉の下半身無限噴射しかり。

 まぁともかくなんか僕だけ喋るという悲しい状況に陥ってしまったが一応ゲームをすることは出来た。

 会話しながら。

 色々あったが、これでようやくFPvPの準備が整ったというわけだよ。

 

「あ、ボスが暴走状態に入るね。僕を全部攻撃を受け切るからみんなは下がっていいよ」

 

 今みんなで戦っているボスは自らの体力が減ったときに攻撃モーションが早くなりダメージ量も増加する、恐慌状態になるタイプのボスなのだ。この状態のボスとはトッププレイヤーであっても戦っちゃいけないと言われる状態だ。なのでみんなを下がらせて僕が一人前に出る。

 ボスの攻撃をすべて受けきり、多種多様な状態異常を食らわせていく。

 スタン、毒、やけどetc‥‥‥。


「あ、倒しきれたわ」

  

 残りの体力が少なかったボスは僕の状態異常によって体力をすべて削り取られ、討伐となってしまった。

 今回毒ややけどを引く確率が高くて予想以上にボスにダメージを与えられたわ。

 うまうま。

 これがまたギャンブルみたいで辞められないぜ!


『素晴らしいな』


『流石』


『こういう強い子を屈服させる時が一番楽しくないかしら?』


『あぁ、強いです……私にも……』

 

 ……鈴鹿。僕もその気持ち少し分かる。

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