第16話
「ん?」
……。
…………。
仮面さんの純粋な疑問。もうこの時点で私の心は折れそうになる。私は仮面さんに何を言わせようとしているの……。
「え、えっと」
だけど、私は止まるわけには行かない。
「霧音はInしている?」
「ん?霧音?まだしてないね」
よし!霧音は頂いた!後はあの一言がくれば……!
「というか、さらっとリアルの名前言ったけどいいの?」
来たァァァァァァァアアアアアアアア!!!
流石は仮面さん!仮面さんなら心配してその一言を言ってくれると信じていたのだ。
……あぁ、胸が痛い……仮面さんの良心を利用している私は死ぬべきだと思う。
でも、この罪悪感にすら興奮している私がどこかにいるのは確かだった。
「大丈夫ですよ。あ、私の名前雨宮理沙って言うんです」
「いきなりどうした!?」
いきなり本名を名乗った私に仮面さんが驚いたような声を上げる。
「男の子に名前を呼ばれて嬉しくない女の子はいないんです!私の名前を読んでください!」
「え……?理沙?」
「はぁん!」
良い……。理沙……、良い!すっごく良い!
興奮する。理性が溶けていくのを感じる。
「えっ……そんななん……?」
仮面さんの少し引いたような声は今の私に届かない。
「おーい!戻ってきてー!」
「はっ!?ご、ご、ご、ごめんなさい!」
「んー?別にいいよ。謝られることの程でもないよ」
「あ、ありがとうございます」
天使……天使すぎるよ……仮面さん。優しすぎる……。私なんかが仮面さんと話していることが申し訳なくなってくる。
「えっとですね、【神無月】の名前が神崎鈴鹿。【侍ちゃん】の名前が老田愛梨です!」
「……ん?これは一応覚えておいたほうが良いのかな?」
「はい。覚えてくれるとありがたいです。私と霧音だけだと嫉妬されてしまいますので」
「あぁ、なるほどね。鈴鹿……愛梨……。ん。覚えた」
「わざわざありがとうございます!」
良し!これでみんなの分の名前は獲得した!
次は言葉だ。
私は自分の手元に置かれている紙を見る。ここにまだマシな言葉が書いてある。
『俺のうんちとおしっこ飲んでいいぜ?』
『叩いて!そのムチで私を強く叩いて!』
『このド変態がッ!』
『許してくださいご主人さま……』
『私は卑しい雄豚です……』
ん?……ま、し?
これが?マシ?どこが?よく見てみると書かれている言葉はどれも日常世界津で絶対に言わないやばい言葉だけだった。
あまりにもやばいのが多すぎて私の感覚がバグっていた……?
『ピ───────! ピ───────────!!!』
とかやばすぎる。
こ、こんなものをか、仮面さんによ、読んでもらうとか……不潔!し、信じられない!
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