第15話

「やぽー」


 私がつけているイヤホンから仮面さんの、男の子の声が聞こえてくる。 


「はぅ」


 意識が飛んでいきそうになるが、なんとか堪える。

 私には使命があるのだ!

 気を確かに持つの!


「え、えぇと……えぇー」


「ん?どした?」


 言葉に詰まっている私に仮面さんが疑問符を浮かべる。


「な、なんでも無いです!今日は何処に行きますか?」


「あぁ。まだレベル上げきっていないから経験値が稼げそうな所が良いな」


「了解です!じゃあ【金の湖】とかですかね?」


 私は一番経験値稼ぎに効率の良いフィールドを例に上げる。


「あぁ、でもあそこ人多いんだよなぁ」


「ですよねー」


 【金の湖】には大量の経験値を落とすゴールデン系モンスターが多数いるため、大人気のフィールドであり、他のプレイヤーたちがたくさんいるのだ。


「……画面が男キャラに染まるの好きじゃないんだよなぁー」


 ……!好き……!

 わ、私が言ってほしかった言葉!

 せ、せっかくなら大好きもほしいなぁー。


「そ、そうなんですか!じゃあ別の場所に行きましょう!」


「お、助かるわー。……一昔前に流行った天蜘蛛の巣なんてどうだろうか?」


「あ、いいんじゃないですかね?」


 天蜘蛛の巣は一昔前に、というかほぼ初期の頃に流行った経験値稼ぎ場。

 まだ経験値を落とす


「んじゃそこに行こうか。僕蜘蛛好きなんだよねぇー」


「だ、大好きなんですか!?」


「な、何故に食い気味?いや、別に大好きってわけじゃないよ?」


 はぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううううううう!!!

 大好き頂きましたぁ!!!

 私達は天蜘蛛の巣へと移動した。

 

 私達は天蜘蛛の巣でモンスターを狩り続ける。

 ……いつ。いつ切り出す!?


「段々と慣れてきたわー」


「そうですね!」


 確かに仮面さんの動きはすでに洗練され始めてきていた。

 多数のモンスターに囲まれてもスキルなども活用し、完璧にパリィを決め続けいていた。

 流石は、仮面さんだ。

 やっぱりPSは異次元レベルだ。私なんかじゃ真似できない。


「あー、慣れてくると楽しいなこのキャラ」


「それは良かったです!」


 はぁぁ、私男の子と会話しているー。もう私的にはそれだけで十分だった。でも、そんな事許されない。

 そんなことしたら殺されちゃう!

 ま、まずはみんなの名前から!

 ……本名ってどうやって仮面さんに言わせればいいんだ?

 やっぱ私なんかじゃ無理だぁ。私のようなゴミ女じゃぁ。

 ……。

 …………。

 よし!この作戦で行こう!


「あ、あの!」


 私は意を決して口を開いた。

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