第10話
一瞬。
僕がボイチャを開いたと同時に二つの軽快な音がイヤホンから聞こえてくる。
はっや。
来るの早。
さっきまでの怒涛の無視は何だったのか。非常に気になるところである。
「え、えっと」
僕はなんて話せばいいかわからず、かといって何も喋らないのも問題になりそうだったので、とりあえず適当な言葉を発する。
「コポォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「うるさい」
いきなり叫んだ誰かにはっきりと告げる。
「はぅん!」
……なんでちょっと……かなり嬉しそうなんだ?
「か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、かか、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、かか、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か、か」
そして、今度はさっき叫んでいた人とは別の人の声が聞こえてくる。
バグったように『か』という言葉を繰り返す声が。
ちょっと怖いんですけど。いや、ちょっとどころではなく、かなり怖いんですけど……?
「仮面さん!」
「はいはい、仮面さんですよ?」
「え、え、え、えっと!私に通話を誘ってくれたってことは結婚してくれるってことですか!?」
「えぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!違うけど!?全然違うけど!?」
いきなり結婚とか言われて僕は驚愕の声を上げる。
「ひっく、ひっく、ひっく。ち、違うん、ですかぁ?」
イヤホンから聞こえてくるのはすすり泣くような悲痛気な声。
ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待ってお姉さん!
それは反則でしょう!女の涙は反則でしょう!
「そ、そうですよ、ね。私みたいな地味な女好きになるわけがないですよね。嫌いで当然ですよね」
「少し待って、君が地味かどうかなんて僕は知らないし、別に嫌いってわ」
「ポォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
どんどんネガティブサイドに落ちていく多分水面を慰めるように言葉を発していた時、おそらく委員長のものと思われる叫び声に遮られる。
「男の子とお話したぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!勝ち組じゃい!ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「ひっく、ひっく、ひっく、どうせ、どうせ私なんて……。気持ち悪がられて一生処女こじらせて死ぬんだぁ……ひっくひっくひっく」
「収集が!事態の収集がつかない!非常に付かない!もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
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