第5話

「私!変態仮面は男なんじゃないかと最近思っているんだけど!」


 学校からの帰り道、ド変態委員長、里原霧音が変なことを言い出す。


「え?何を言っているの?そんなわけないじゃん」


「いや!だってさ、美少女キャラを好んで使い、自分は男だと主張する。彼が言う下ネタはどれも女がメインであることのほうが多い。いくら男の子を演じているからといると言ってもあんなに完璧に男の子らしく振る舞えるものだろうか?」


「男の子は下ネタ言わないし、全然男の子らしく振る舞っていなくない?ただ女の子が好きなんじゃない?レズの人もいるじゃん」


「だとするのならばなんであんなにチャットH得意なの!」


「……確かに」


 仮面さんのチャットHはまぁそれはそれは素晴らしかった。

 とても素晴らしかった。

 あれ以来ちょくちょくやってもらっている。

 なんか最近はやってくれなくなったけど。

 ……悲しい。


「でしょ!?やっぱり男の子なんだよ!」


「でも……そう思うと私達は毎日男の子の前で下ネタを言っていたんだよ?すっごく恥ずかしくない?」


「好きって言ってくれたんだ!」


 あっ……そういう。

 好きって言われたから男の子だと信じたいわけか。


「安心して。霧音のことが好きだなんて言ってくれる男の子はいないから」


「なんでよ!?これでどうするの!?本当に男の子だったら!あなたは私のことを泣いて羨むことになるだろうよ!」


「あ、私も仮面さんに好きだって言われたから」


「じゃあ私達ふたりとも娶ってもらおう!」


「はいはい。そうだね」


 ……異性として好きって言っているわけでは確実にないと思うんだけどね。


「それでさ!ボイチャ出来ないかな!?」


 ボイチャとはコンピューターネットワーク上で、二人以上の相手と音声によるメッセージをリアルタイムでやり取りするシステムのことだ。


「どうだろう?以前誘った時はだめって言われたし。男の子を演じているなら無理じゃないかな?」


「で、でも!好きって言われたし!応じてくれるかも知れないじゃん!」


「はいはい。そうだね。じゃあ一回帰ったら頼んでみようね」


「うん!帰ったらすぐにログインするんだよ!」


「わかったわよ」


「これでようやく私にも春が!」


「はいはい」


 仮面さんが男の子なわけがないじゃないか。下ネタを容認してくれる男の子なんて二次元だけ。二次元とリアルは違うというのに。

 可哀想な人だ。


「あ、ボイチャは理沙から誘ってね。私は上手く喋れる自信はないから」


「え?」

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