第36話
「うーん。美味しい」
僕はお母さんがおみやげとして買ってきてくれたマカロンを食べる。
表面はパリッと中はしっとりとしていて甘くてとても美味しい。
「私が買ってきてもらった方もいる?」
和葉が自分のお皿から和葉の分であるクッキーを手に取る。
お母さんは僕が幼少期から大好きだったマカロンを、和葉にはとりあえず王道のクッキーを買ってきてくれたのだ。
和葉がマカロン嫌いだったら困るからね。
マカロンが好きな僕には到底わからないが、マカロンが嫌いと言う人も一定数いるらしいし。
「うん。いる」
「じゃあ、はい」
和葉は僕のお皿に自分の分のクッキーを置いてくれる。
「あーん」
僕はそれを無視して、口を開ける。
「え?それ…」
「あーん」
口を開ける。
「え?」
「あーん」
口を開ける。
「え?無視?」
「それはこっちのセリフだよ!あーんだよ!あーん!」
僕は口を大きく開ける。
「え!?」
ようやく僕の言葉の意味に気づいた和葉が顔を赤らめ、動揺しだす。
ボタボタと水が垂れている音が聞こえてくる。
……うん。僕はに何も聞こえない。
「はい、あーん」
僕は口を開く。
「あ、あーん」
僕の口元にクッキーが入れられる。
「うん。美味しい」
おお。結構良いクッキーだな。クッキーなんて久しぶりに食べたけど美味しいな。
「じゃあ僕のもあげる。はい、あーん」
僕はマカロンを掴み、和葉の口元にまで持ってくる。
「え……え、っと……あ、あーん」
和葉は恥じらいながらも口を開く。
……この世界ではこういう反応は反対なのではないのだろうか?
僕は和葉の口にマカロンを入れてあげる。
「お、美味しい」
「良かった良かった」
「……賢人の味がする……」
ぼそりと和葉がつぶやく。
水滴の音がどんどんひどくなっていく。
「ふふ、僕の味なんかするわけないじゃん。ただのマカロンだよ」
「で、でも」
「ふふ、僕の味味わってみる?」
僕は自分の人差し指を和葉の方へと向ける。
「ふぇえ!?……え、えっと……はふっ」
和葉は僕の人差し指を見て慌て始める。
パクパクと口を開け、何度も僕の指に口を近づけてから離してを繰り返す。
「……だ、大丈夫」
結局食べないを選んだようだ。
「いつでも食べたくなったら言ってね?」
「はひゅん!」
和葉は変な声を上げて固まる。
初心な反応でからかいがあるなぁ。
もしかしてこの世界の女性は狩るつもりでいても、実際に襲う勇気はないのだろうか?……まぁ試す勇気なんてものはないんだけどね。
……はぁ。ドキドキしたぁ。
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