第30話

「あー、食べた食べた。美味しかった」


 僕はパラソルの下、優雅に横になりながらつぶやく。


「それは良かったわ」


 優雅に横になっている僕の隣でバーベキューに使った道具の後片付けをしているお母さんが笑顔でそう言ってくれる。

 配達員のお姉さんはお母さんのお手伝いをしている。

 準備から片づけまでしてもらっている横で優雅に横になっているのは非常に心苦しいのだが、仕方がない。

 だってそういう文化なのだから。

 僕が手伝うと言うと、そんなの男の子に任せられないと言われてしまうのだ。

 悲しいことにね!

 ……ふーむ。でもやっぱり居心地が悪い!なんかムズムズするよね!


「よっと。手伝う!」


 流石にこのまま何もせずに横になっているのに耐えられないので、無理やり手伝わせてもらうよ!


「え、ちょ」


「まぁまぁ」


 僕は有無を言わせずに作業を進めていった。

 

 ■■■■■

 

「だんご。作りやすいわー」


「え……あ、うん。そうだね……」


 僕は宅配員のお姉さんに自分の作っただんごを見せる。

 配達員のお姉さんはそれを見て顔を赤らめ、口をモゴモゴさせる。

 ちなみに、このだんごは少しぬるぬるしていた。

 まぁ。そういうことだ。

 作りやすいね!

 僕はいくつも作った丸をいい感じに重ね合わせオブジェを作り上げる。


「すっご……」


 そうか?僕は自分の隣でボソリと呟いたの言葉に首を傾げる。

 自分で作ってみたは良いけどいまいちだな。50点くらい。もっと上手く作れたかな。


「帰るわよー。着替えてきてー」


 ちょっと遠くに止めていた車をこっちまで運んできてくれたお母さんが声を張り上げる。


「あ、はーい」


 僕は立ち上がりオブジェを蹴り飛ばす。


「あぁ!?」


 今回のお出かけは日帰り。もうすぐ帰らないといけない。でないと夜ご飯と寝る時間が遅くなってしまうからね。

 まぁ僕の睡眠時間とかいつもクソだけど、お母さんが目を光らせているうちはちゃんと規則正しい生活をしなくてはいけない。

 面倒だけど。

 僕は男用の更衣室に向かった。

 ……侵入者の痕跡は……なし。僕の服が荒らされた形跡も……なし。変な匂いも……なし。

 もーまんたい!

 僕は安心して更衣を開始した。

 フラグなんかじゃないんだからね!

 

 ■■■■■


 僕は車の窓から夜の景色を眺める。

 こうして夜の町を近くで見るのは久しぶり。前世ぶりだ。

 ……ほとんど前世とは違う似ている町並み。しかし、町に見える人は女性だけ。広告の看板にも男の姿は見えなかった。

 それがここが異世界だということをはっきりと記していた。

 ……僕は、この世界に生きているんだなぁ。

 あ、ちなみに更衣室では何も起きなかった。

 押すなよ!押すなよ!の文化がこの世界にはないのかな?

 まぁ実際に何かあったら僕はめちゃくちゃ困るんだけど。

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