第28話

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 僕は全身全霊を持ってして体を動かす。

 手に、足に、全身に!

 僕は今久しぶりにこの大海原を全力で泳いでいた。

 まるでお手本のような完璧な動きでクロールをする僕は前世のオリンピック選手レベルの速度が出ていた。

 ゴールは目前!

 このまま行けば……!


「あふん!」


 僕はあっさりと津波によって流された。

 いや、津波ではない。

 これは……配達員のお姉さんが泳いだことによって発生したただの波。

 意味がわからぬ。

 僕はそのまま波に流されていった。

 そんな僕の横を駆け抜けるのは配達員のお姉さん。

 配達員のお姉さんは流されていく僕を差し置いて容易く勝利した。

 今僕達は競争していたのだ。

 どちらのほうが早くゴールにたどり着けるかという100m競泳。

 40秒とかいうとんでもない特大のハンデを付けてのレース。

 僕がスタートしてから40秒後にスタートした宅配員のお姉さんはゴール目前だった僕を押しのけて悠々と勝利を掴んでみせた。

 ……なんでぇ?

 まだ君スタートしてから1秒も経ってないよ?

 新記録とかいうレベルじゃないよ?オリンピックに出たら?

 この世界のオリンピック選手前世の女選手と似たような成績だし。

 君が出たら金メダル間違いなしだよ。

 ……化け物かな?


「だ、大丈夫!?やりすぎてない!?」


 哀れにも流され続けていた僕は柔らかいクッションによって受け止められる。

 柔らかい……。

 僕の耳を打つのは宅配員のお姉さんの優しげな声。

 僕の後頭部が幸せいっぱいの柔らかさを捉える。

 ……お?僕のエクスカリバーがピクリと反応したよ?


「うん……大丈夫」


 というかむしろグッチョブ!おっぱいをありがとう!


「反則よね。君。早すぎない?」


「え、そ、そうかな?」


「うん。まぁそ……ん?」


 僕は自分の足に何かぬるぬるとしたものを感じて首を傾げる。

 え?これは……海水じゃないよね?

 ……つまりこれは……ま◯汁!

 平常運転なんやね。下のガバガバ具合は。


「どうしたの?」


 ……ん?……多くね?なんかめちゃめちゃヌルヌルするよ!海水どこかに行っちゃったよ!?

 どんだけ出すの!?ほ、本当に大丈夫なの?


「だ、脱水とかになったりしないの?」


「ん?全然平気だけど?」


「あ、そう」


 僕の質問に対して配達員のお姉さんはなんでもないかのように平然と答える。

 ……平気なんだね。

 こんなに出しているのに。

 全然水分を摂っている様子は見れないのに……。人体って不思議だなぁ。


「そ、そんなことより大丈夫!?わ、私やりすぎちゃったなって!」


「ん?平気よ平気。過保護過保護。むしろ手加減されたほうが萎えるし、宅配員のお姉さんの異常さを面白がっているよ」


「そ、そう?それならよかったぁ」


 宅配員のお姉さんはほっとしたように一息ついた。

 可愛いなぁ。

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