第23話
「えっと私は」
「ちょっと待って」
話し始めようとした配達員のお姉さんの言葉を遮る。
「こんなところで話すの普通に怖い。早く家の中に入ろ?」
僕達が今会話していた場所はなんと驚きの廊下。
家の中ではないのだ。
今のところはまだ誰も襲いかかって来ていないが、いつ襲いかかってくるかもわからない。
まぁここに住んでいる人たちは上級国民だしそんないきなり理性を失って襲いかかってくることなんてないと思っているけど。
「あ、そうね」
僕達は三人で家の中に入り、リビングに置かれた椅子に座る。
「あ、僕飲み物持ってくるね」
「あ、私がやるよ!」
「いいのいいの。これくらい僕がやるよ」
僕は席を立ち、冷蔵庫に向かう。
「あ、レモンティーでいい」
「えぇ」
「男の子が入れてくれたものなら例えヘドロでも飲むわ」
……ヘドロなんて飲まないで?もし僕が入れたものだとしても飲まないで?僕が入れたものに自分の命をかけるほどの価値は確実にないよ?
僕は食器棚からグラスを3つほど取り出しレモンティーを注ぐ。
「ほい」
僕はお母さんと配達員のお姉さんの前にグラスを置く。
「それで、あなたはどなたなんですか?」
「えっと私は……配達員です。出前家の」
「配達員?出前家の?なんで?」
お母さんは困惑したような表情を見せる。
「僕は出前家でお昼ごはんを頼むんだよね。そのときに配達してもらっている人だよ」
「え?」
僕がわかりやすく教えてあげると、お母さんは困惑したような表情を見せる。
「だから、僕が出前家頼むときにいつも運んでもらっている人。誰かわからない人に宅配されるより、知っている人に全部頼んだほうが良いでしょう?」
「な、なるほど」
僕の説明にお母さんは半分納得したかのような表情を見せる。
「それで。このお姉さんに襲われりしなかった?」
「初めて会ったときは襲われそうになった」
「それは!」
「でも、ちゃんと倒したし、それ以来ずっとなにもすることなく指示にしたがってくれた良い人だよ」
「なるほどね……わ、わかったわ」
お母さんは一度ちらりと宅配員のお姉さんを、お姉さんの下半身に視線を向ける。
そのビショビショの下半身に。
「ほ、本当に襲われていないのよね?」
「うん。なんか色々と残念な人だけど。良い人。今回も助けてもらったし」
「そっか。ならいいわ。あなたのことは不問に処してあげるわ」
「ありがとうございます!」
配達員のお姉さんがお母さんに勢いよく頭を下げた。
ん?なんでさも結婚の挨拶かのようなノリなんだ?別に僕の知り合いってだけじゃないか。
よくわからない。
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