第21話

 閃光。

 それとともに吹き飛ばされる人。

 ……。

 …………。

 え?


「大丈夫。もう安心して私が来たから」


 ……。

 …………。

 安心できるかボケェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!

 お前が一番の恐怖じゃい!

 今何したん!?

 というからどこから!?

 僕はエントランスの自動ドア開けていないよ!?

 え?え?え?とにかく僕の頭は困惑に占められる。

 何が起きたんだ?


「ど、どうしてここに?」



 困惑する僕の口から出たのはよくある言葉。


「いや、マンションの前で呆然と立っていたら男の子の気配を感じたから壁を駆け上がって駆けつけてきたのよ」


 ……?

 ちょっと何を言っているのか僕にはわからない。

 ん?マンションの前に立っていた、え?一階のエントランスのところだよね?道路だよね?

 え?僕の気配を感じた?……どうやって……?

 え?それに……壁を駆け上がった?

 ちょっと何を言ってるのか分からない。


「ちょっと待っててね。不届き者を捉えておくから」


 配達員のお姉さんは覆面の女性たちを縛るためにロープを取り出し、三人の方に近寄っていく。

 ん?ロープはどこから取り出したの?なんでそんなものを持っているの?

 まぁ、気にしないほうが良いだろう。

 きっとね。

 ポタポタと水滴が垂れる音が響く。

 ……気にしちゃだめだ気にしちゃだめだ気にしちゃだめだ気にしちゃだめだ気にしちゃだめだ。


「よし」


 とんでもない早業を持っていとも容易く縛り上げた。

 ……え?なんで亀甲縛りなん?

 下ネタ直下のこの世界においては亀甲縛りが当然なのか?常識なのか?


「安心してね。もう二度とこんな目に合わせたりしないから」


 未だに混乱と驚きから抜け出せない僕を見て何をトチ狂ったのか、そんなことを言ってくる。

 なるほどね……なるほどね。

 確かに助けられた。今回のことでとんでもない借りが出来てしまっただろう。

 でも、今は君が一番怖い。ダントツで。

 ちょっと人間離れしすぎじゃないですか?

 なんというか、完全に感謝しきれない。

 すべてはァァァ。すべてはァァァ。

 宅配員のお姉さんの下半身が漏らしたみたいにびちょびちょになっているせいだ。おしっこのアンモニア臭はしない。つまりは……そういうことなんだろう。

 僕の本能が萎縮しきっている!!!

 こいつは危険だと本能が叫んでいる!!!


「あぁ。安心して。私は男の子を襲ったりしないから。私は君を守ると誓うよ」


 宅配員のお姉さんはまるで映画の主人公のように頼もしい笑顔を浮かべる。

 本当に……本当に……!下半身のそれさえなければ……!

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