第18話

 ……。

 …………。


『え?無視?無視?』


 ……。

 …………。


『酷くない?僕頑張ったよ?そんなに無視することある?』


 ……。

 …………。


『おーい!おーい!生きてますかー!』


 ……。

 …………。

 私は呆然とチャット欄を眺める。

 何なのだ?あれは……。

 リアルすぎた。

 まさかここまでとは……いや、あんなの予想できない。

 予想できるわけがない。

 今この世界でここまで完璧に男の子のオ◯ニーを再現できる人がいるだろうか?いや、いない。

 確実にいないと私は断言することが出来る。

 ……もしかして仮面さん……本当に男の子?いや、それは流石にないか。

 下ネタに乗ってくれるような男の子は存在しない。

 超絶売れている官能小説家なのかもしれない。

 小説家で家にずっとこもっているからこそずっとゲーム内にいるのかな?

 ここまで完璧に再現できるということはやっぱり男の人の経験があるのだろうか? 

 ……羨ましい。

 いいなぁ。私も彼氏欲しい。デートして、抱き合ったりなんかして、キスなんかしたりして……それで……!

 キャッ!

 もう……想像するだけで……!


『え?……いつまで僕は無視され続けるの?もう泣いて良いのでは?僕』


 はっ……!?いつまでもトリップしているわけにはいかない。


『あぁ、ごめんごめん』


 私が現実に戻ってくるのと同タイミングで、ド変態委員長、霧音も戻ってきたようだ。

 愛梨も私と同じくトリップしていたようだ。


『あまりにもうますぎてトリップしていた』


『お?そう言ってくれると嬉しいわ。頑張ってやった甲斐があったわ。今僕は賢者モードよ』


『賢者モード?なんですか?それ?』


『ん?あぁ。男にはね。一発やったら悟りを開くんだよ。虚脱感、虚無感が襲いかかり、頭が冴えわたるんだよ。だからね。男に二回戦を求めないでね?何発も出来ないから。まぁ僕は童貞で経験なんてないんだけどね!』


『へぇーそんなものが』


『そうそう。君たちも彼氏ができたらそれを心がけてね?それを心がけたらモテるかも知れないよ?』


 ……そもそも出会いがないからなぁ。

 というかこの人すごくいろいろ知っているな。

 なんというか余裕を感じる。

 初めて心の底から仮面さんを尊敬したかも知れない。


『いやー。でも本当にすごかったな。またやってほしいな』


『いいよ。その代わりにオ◯ニー女版もやって?』


『え?なんで?wどこに需要が?』


『私委員長のオ◯ニーとか見たくないです』


『私もだわw』


『僕は見たい。男の子だからね』


 あ、その設定こんなところにも出すのね。

 この人の凝り具合には本当に頭が上がらない。


『あ……ちょっと待って。普通にクエスト失敗しているじゃん』


 あ……。

 画面に写っているのはクエスト失敗という文字。

 ちょっと集中しすぎて完全にクエストのことなど忘れていた。


『あー!!!クエスト失敗したことなかったのに!?あぁー!?』


 私はチャット欄に流れてくる仮面さんの断末魔を見て、とても申し訳なくなった。



 今日僕誕生日!

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