第12話

『ほいほいほいほいほっほいのほーい』


 仮面さんがDMで意味のない文を私に送りながら圧倒的なPSで氷餓狼王をボコボコにしている。

 一体どうやってキャラを操作しながらDMを送ってきているの?

 腕が三本でもあるの?

 キャラの操作に私は両手を必要とするんだけど……?


『あ、全体攻撃来る。僕死んだ。後は任せる』


『了解です!』


 氷餓狼王が絶対必中の全体攻撃を発動させ、一瞬で仮面さんの体力が吹き飛ぶ。

 仮面さんのPSは絶大。

 仮面さんは全ての攻撃を回避できる。しかし、絶対必中の全体攻撃。PSではどうあがいても避けることの出来ない一撃。

 いくら仮面さんでもそれを回避することは容易ではない。


『よろぴく〜』


『はい!頑張ります!』


 仮面さんも蘇生アイテムを持っているのですぐ復活してくるだろう。

 しかし、蘇生アイテムは死んでから30秒経ってからじゃないと使えない。

 私はこの30秒間なんとか私一人で耐えなくてはいけないのだ。

 ここで私まで死んで、パーティが全滅してしまうとクエストに失敗してしまうのだ。

 私は気を引き締めてパソコンのマウスを握った。


『よーし。僕復活!』


 まぁ。所詮は30秒。

 すぐに仮面さんが戦線に復帰。

 氷餓狼王の絶対必中の全体攻撃は一度しか使わない。そのまま普通に仮面さんが押し切り、勝利した。


『周回するよね?』


『はい。お願いします』

 

 私が仮面さんと周回していると、鈴鹿、【神無月】がゲームにログインしてくる。

 私達は一旦氷餓狼王の周回を終わらせて、鈴鹿が欲しがっていた素材の周回に向かった。


『いやー、助かるわー。私こいつに勝てないから』


『まぁ僕がいればこれくらいらくしょーのらくしょーっすわ』


『まぁ本当に仮面さんは化け物レベルですよね』


『ふふん!総プレイ時間20000時間舐めんなよ?』


『やっばwまだリリースしてから2年半しか経っていないのにそれはやばい』


『本当です。どんの引きです』


 ……どれだけゲームをしているのだろうか。この人。

 本当に仕事は何なの?


『あー。ショタな彼氏欲しー!』


 1時間ほど周回を続けていると突然鈴鹿がそんな事を言い始める。

『お?お?お?いきなりどした?』


『いやー、だって欲しいじゃん!私達は華のじょしこーせ何だよ!漫画みたいな展開プリーズ!』


『神無月。華は無理があると思うのだけど』


『いやいや、十分華はあると思うよ?じょしこーせには。漫画みたいな展開ならリアルに起きているでしょう?自分の好きなゲームのフレンドが超絶イケメンだった。みたいなアニメあったよね?』


『確かに変態仮面がイケメンだったらその通りだね』


『あー、ごめんごめん。僕は超絶美少年だったわ。ごめんね』


『はいはいそうですか!あー。男をドチャクソ犯したい私の下にひれ伏させたい』


『やめて』


『わ、私はと、とりあえずキスとかしてみたいです……』


『純情!?君となら全然いいよ!?』


 私達は男の子の前では出来ないような下ネタトークで盛り上がった。

 純情純情言われて恥ずかしかったし、仮面さんは男の子設定を貫いていてすごいと思った。

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