第11話

「ただいまー」


 私は玄関の扉を開け、声を上げる。

 しかし、声が帰ってくることはない。

 妹も姉もいないから当たり前である。

 私は自分の部屋へと向かう。

 制服を脱ぎ、シワがつかないようにハンガーにかけてから私服に着替える。

 私服は動きやすいジャージ。我ながらなんともダサい格好だとは思うが、どうせ出会いなどないのだから関係ない。

 ……自分で言っていて悲しくなってきた。

 あーあ。どっかに男の子が落ちていないかな?

 私は自分の椅子に座り、パソコンを起動する。

 起動したパソコンを操作し私は【エスプリ】を起動する。

 パソコンの画面に表示させるのはみんなとこだわって作ったギルドのルーム。

 ギルドマスター曰く表面上にエロはない。

 しかし、裏を見ろ。一つの小さな真実に囚われるな。広い視野を持て。

 さすればすべてが見える。

 大いなるエロスを確認することが出来るとのことだ。

 ちなみに私はよくわかっていない。

 あ、ギルドはこのゲームにあるシステムの一つだ。

 レイドボスなどは普通一人で討伐できないので、パーティを組むというシステムがあるのだが、それとは違い一時的に組むのではなく、大人数で長期的に活動を共にするもの。【エスプリ】では、 ギルドに入ることで得られる数多くのメリットがあるので、大抵のプレイヤーがギルドに入っている。

 そして、ゲーム内で大規模なギルド対抗戦が開かれ様々な権利・報奨等が獲得できるようになっている。

 私達のギルドは仮面さんのおかげで最上位ギルドとなっている。

 トッププレイヤーで構成されている10人パーティーを単独で全滅させたギルド対抗戦は伝説の一戦だ。

 私はフレンド欄のところからオンラインと表示されている仮面さんにDMを送る。

 ……あ。

 今仮面さん新しく実装されたレイドボスを単騎で戦っている。

 私は仮面さんのバトルを観戦で見る。

 ……。

 …………。

 やっぱりこの人は次元が違うなぁ。どうしたらあんな変態機動が出来るのだろうか?

 仮面さんがクエストを終わらせるのと同時に私のほうへDMが送られてくる。


『いいですよー』


『あリがとうございます!……えーと』


『あ、いつもどおり観戦オフにしますね』


『あ、ありがとうございます!』


 流石に仮面さんと一緒にプレイしているところを何万人もの人に見てほしくはない。

 私はたくさんの人に見せられるほどのPSを持ち合わせてはいない。


『じゃあ氷餓狼王のところに行くよー』


『はい。お願いします』


 私は仮面さんと一緒に氷餓狼王がいるマップへと転移した。

 

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