第10話

「おいし」


「理沙ー」


 私が高校の昼休憩で昼食を取っていると、クラスメートであり友達である神崎鈴鹿が私の名前を呼ぶ。


「んー?何?」


「今日はいつぐらいからログインするー?」


「あー。今日は部活もないし。すぐに帰ってからログインするかなぁ。氷餓狼王の素材も集めたいし」


 私、雨宮理沙と鈴鹿が話しているのは、私達がやっているゲーム【エスプリ】についてだ。

 私達はこの高校に通う何人かの友達と一緒にやっているのだ。

 ギルドやLINKのグループラインも作り、学生にしてはガチでやっている方である。

 ちなみにギルド、グループ名は【美少年と繋がりたい】。

 おそらく【エスプリ】をプレイしている男の人なんてこの世に存在しないだろう。

 まぁ自分が好きなものを一緒に楽しめるという理想には憧れるが……。

 そもそも町なかを歩いているどころか、ゲームしている男の人自体が都市伝説なので無理だろう。


「え?氷餓狼王?あなた一人で倒せる?みんな部活あったと思うんだけど……」


「ん?あぁ。多分大丈夫だよ。仮面さんに助っ人を頼むから」


「あぁー。あの人ね。あの人なら常にいるから大丈夫か」


「うん」


 仮面さん。リアルの友達の集まりである【美少年と繋がりたい】で唯一リアルの友達じゃない人。

 自分のことを男だと言い張っておきながら、一番下ネタをぶっこんでくる人。

 そんな少しおかしな人だけど【エスプリ】においての仮面さんは最強。いくつものイベントで一位に輝いているトッププレイヤー。

 あの人は常にゲーム内にいるのだ。

 仕事はどうしているんだろうか?

 ものすごく課金しているし、一体財源はどこから来ているのだろうか……。


「なるほどねー。私もちょっと欲しい素材があるんだけど……手伝ってくれない?」


「ん?あぁ。それくらいなら全然いいよ」


 私と鈴鹿はダラダラとおしゃべりしながら昼休憩の時間を過ごす。

 

 キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン


 待って!?弁当まだ食べ終わってないよ!?

 急げ!?

 

 ■■■■■

 

 私は授業が終わった後、電車を用いて学校を出て家に帰る。

 町を歩いているのはみんな女性。

 電車の中は女臭くて気持ち悪い。

 私、というかこの世界に住んでいる女性はみんな昔の第二次世界大戦で男を大量に殺害したという謎の生物兵器のことを恨んでいるだろう。

 男女比が1:1だった世界はどれほど素晴らしい世界だったのだろうか?

 きっとそこは天国だったに違いない。

 私はそんな事考えながら家についた。

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