第8話

 僕は出前家お姉さんが持ってきてくれたものを机に置く。

 今日の僕のちょっと早めのお昼ごはんはピッザである。

 美味しい美味しいピザ。

 ジャンクなものはやっぱり美味しいよねー。

 この世界には男専用の宅配システムが存在する。

 三食分、一流の料理人が作った男のためだけの宅配システム。

 これは予め男に耐性がある特殊な女性が置き配してくれるのだ。

 僕はこのシステムの夜ご飯だけを頼んでいるのだ。

 朝は食べないし、昼は出前家だし。夜だけでいいのだ。

 ちなみに僕が元いた世界とは違いコロナウイルスがなく、みんな同性なのでフレンドリー。

 そんな世界に置き配なんてシステムは普及していない。

 それ故に僕はわざわざお姉さんを懐柔して置き配してくれるように頼んだ。

 いやー。大変だったよ。

 麻酔銃を平然と避けて天井を蹴って突撃してくるんだもん。

 人間じゃねぇよ。あれ。やっぱこの世界の女性は怖い。

 まぁでもそれに見合う成果はあったけど。

 基本的に僕の生活に必要な品々はお姉さんに用意してもらっている。

 服も、ティッシュも、トイレットペーパーも、レモンティーも。

 今や僕はお姉さんなしに生活するのが困難というレベルになるまでお姉さんに依存していた。

 僕は双眼鏡を手に持ち、窓から町行く人達を眺めながらピザを食べる。

 町を歩く人達はみんながとんでもないほどの美人。

 そんな美人が

 あぁ。僕もあの中に入りたい。

 入ったら最後僕は食われるだろうけど。

 ほんと。

 男を前にしていないときのこの世界の女性は完璧なのに。

 前世の僕が速攻で告白するくらいには。

 お姉さんも未だ僕との会話には慣れていないようだし。僕と普通に生活してくれるならいつでも僕の彼女になって欲しいんだけど。

 なんなら結婚して夜のハッスルしたいところなんだけど。

 ……なんで僕はこんな世界に来てまで童貞なんだ……。

 なんで僕の聖剣は未だに封印されたままなのだろうか?

 もう神様からお前は童貞でいろというお告げなのかな?

 悲しい。僕は非常に悲しいよ。

 なんでこの世界にはキャバクラがないんだ!出会い厨がいないんだ!

 まぁキャバクラなんて開いても客来ないし!出会い厨なのに出会えないからいなくて当然なんだけど!

 この世界ホストすらないしね。

 基本この世界の男は女嫌いだし。

 僕の元いた世界のツイフェミ並みに女のこと嫌いだし。


「ごちそうさまでした」


 ピザを食べ終えた僕はゴミを片付け、手を洗い自分の部屋に向かう。 

 ……あー。確か今日はあのゲームのイベントの日だったなぁ。

 さっさとイベント完走しよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る