第3話
僕は前世では決してお目にすることはなかったであろう高そうな冷蔵庫の前に立ち、レモンティーを取り出す。
「ふんふんふん」
僕はバカラのグラスを取り出し、レモンティーを注ぐ。
「ごくごく。あぁー」
僕は一気に飲み干した。
「ふぅー」
……20000円超えのバカラのグラスに1500mlで160円くらいのレモンティーを入れて飲むのなんて僕くらいじゃなかろうか。
金持ちが何を飲んでいるかなんて全く予想つかないが。
ちなみに、僕は金持ちである。
冷蔵庫は勿論のこと、電子レンジ、フライパン、家具全部が前世では高いものに疎かった僕でも知っているようなハイブランドのもので揃えられている。
ゲームでも廃課金と呼ばれるレベルには課金を繰り返している。
そんな僕は無職の無職。
キングオブ無職なのである。
母親の稼ぎがいいのと、男というだけで政府から多額の支援金が送られるので生活には困らないどころか、めちゃくちゃ贅沢に生活することが出来る。
普通は何もしていない無職にアホみたいな額の支援金を送るなど、一般市民は許さなそうだが、男を養えるなら全然構わないらしい。
というか、更に支援金の額を増額すべきとか言っている人がかなりいるのだ。
本当にとち狂っていやがるぜ。この世界は。
まぁその分義務もそこそこ多いけど。
妻を最低12人は娶らないといけないんだぜ?あの猛獣を……。
僕は夜、干からびることになるだろうよ。
ピンポーン。
僕が優雅に高い椅子に座り、高いグラスに注がれた安いレモンティーを飲んでいると、家のインターホンが鳴る。
お?出前が届いたかな?
インターホンの画面を見ると、最早見慣れてしまった配達員さん。
「はーい。今開けるねーいつもどおりお願いね」
『……んっ。……はい』
配達員は悶えながら、はいという小さな返事を絞り出す。
……もうそろそろ慣れよう?もうかれこれ5年くらいの付き合いだよ?
家の鍵を確認!チェーンを確認!武器を確認!
よし!よし!よし!
ピンポーン
家のチャイムが鳴る。
玄関の扉につけられたドアアイを覗き込み、玄関の扉の前に立つきれいなお姉さんの姿を確認。
かわよっ。
前世であれば今すぐにドアを開け、キモオタ童貞の滾りまくる無限の性欲をぶつけているところだ。
だが、俺の聖剣は頑固として封印を解かない。
僕と同じく引きこもっている。
配達員のお姉さんが家の前に僕が出前で頼んだものを玄関の前に置いておいた台の上に置き、完全にいなくなったことを確認してから外に出る。
急いで出前の料理をとって戻り、玄関の鍵をかけた。
玄関の鍵!チェーン!
よし!よし!
リビングに戻ろ。
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