第44話 婚約者の妹

 その次に会う相手は婚約者のセレカの妹・セリンだった。


 23歳のセレカより8つ年下のセリンは、利発で美しく、明るい性格の少女だ。八柱国という大貴族の家に生まれたお嬢様でもある。


 学業も優秀で、若くして進士に合格し、美人姉妹がそろって国を支えることになるだろうとも言われていた。


 セリンはセレカに溺愛されていて、レンリとも親しい仲だ。セレカたちとは家ぐるみの付き合いもあったから、「レンリ兄さん」なんて言って慕ってくれていた。


 そんなセリンは、帝都の陥落とともに、セレカと一緒に行方不明になっていた。

 殺されるか奴隷にされるか、と思っていたので、ライラとともに逃亡して、生きていてくれたのは嬉しい。


 ただ……。


「レンリ兄さん、久しぶりですね」


 目の前で妖艶に微笑むセリンは、まるで別人のようだった。

 

 榛色の瞳と茶色の髪は、姉そっくりだが、姉と違って短く切っている。

 可憐で愛らしい容姿は以前と同じなのだが、昔は弾けるような明るさと無邪気さがセリンにはあった。


 才色兼備といっても、年相応の少女だったのだ。

 だが、今のセリンは――少女ではなく、女だった。


 娼妓のような薄い白い布地の服一枚に袖を通していて、15歳にしては豊かな胸の谷間が見えている。


 それだけでなく、布地が薄すぎて、桜色の乳首も少し透けていた。

 そして、媚びるように、誘惑するようにレンリを上目遣いに見ている。


「すみません。本当はレンリ兄さんが皇女殿下と帝都を離れるとき、見送りに行きたかったんですけど……」


「ああ、あのときは仕方ないよ。官僚以外は見送りには参加できなかったはずだし」


 講和交渉が行われるのは極秘で、宮廷や軍の関係者しかレンリたちの見送りには来なかった。

 だからまだ民間人のセリンが参加できなかったのは、やむを得ない。


 むしろ黙って帝都を去ったレンリのほうが申し訳ないとも思う。


「ともかく無事で良かったよ」


「無事……ですか」


 セリンはふふっと笑う。


「無事だったと思いますか?」


 レンリはなんと言えばいいかわからなかった。おそらくセリンは、ライラと同じく……。


「ねえ、わたし、レンリ兄さんのこと、好きだったんです」


「え?」


「女の子として、レンリ兄さんのことが好きでした」


 突然の告白に、レンリは戸惑う。レンリはセリンと親しかったが、好意を持たれているとは思わなかった。


 ただ、セリンの身近にいた年上の男性は、レンリぐらいしかいなかった。レンリも進士だし、そういう意味では、憧れのような感情を持たれていたのかもしれない。


「でも、ですね。セレカ姉さんもレンリ兄さんのことを愛していましたから、我慢していたんです。わたしは姉さんを応援してあげなきゃって思って」


 セリンが寂しそうに言う。


 セレカは死んだと報告がある。セリンが遠慮するべき相手はいなくなった。

 そして、セリン自身は……。

 

「わたしは、姉さんの目の前で、何度も翼人の男たちに抱かれました。処女だったわたしを裸にして、何度も何度も……」


 セリン自身もつらいが、そうだとすれば、セレカも死ぬ前に同じような目にあったのか。

 レンリは目の前が真っ暗になりそうになった。


「その後、翼人の軍の宿泊地で娼婦をさせられていました。わたし、けっこう人気だったんですよ? 殴られないように、男たちに媚びる方法を覚えて……。後宮の胸もお尻も大きい美女たちには負けましたけど、少女が好きな男も多かったですから、指名されることも多かったんです。……滑稽ですよね。貴族の令嬢で、秀才だなんて呼ばれて、国の未来を背負うんだって思っていたのに、気がつけば男たちの慰み者です。わたしはただの女の子で……」


「セリン。もうここには敵はいないから……」


 だから、自分を傷つけるようなことを言わないでほしい。レンリがそう言う前に、セリンがレンリに抱きついた。

 布一枚を隔てて、セリンの胸がレンリに押し付けられる。


「わたしを惨めだと思い、わたしを慰めてくれるなら……レンリ兄さん、わたしのことを抱いてください」


「そ、それは……」


「わたし、たくさんの男に抱かれました。翼人だけじゃないんですよ? 占領軍に協力する帝国人も、大貴族の娘だと聞いて、わたしを金で買いました。何人も何人も毎日相手して……。いつのまにか、それで喜ぶ自分がいて。わたしのこと汚いって思いますか?」


「そんなこと、思うわけない!」


「なら、わたしを姉さんの代わりに抱いてください。わたし、あんなに犯されたのに、妊娠はしていないんですよ? レンリ兄さんの子供を、セレカ姉さんの代わりに生むために、わたしは生かされているんじゃないかって、そう思うんです。だから――」


 セリンはレンリの唇を奪った。その口づけは、とても15歳の少女のものとは思えない、情熱的なものだった。


「わたしにレンリ兄さんの子供を産ませてください」


 甘えるようにセリンは言った。








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