第43話 先帝の寵妃はレンリの子を生むと約束する

 23歳の先帝の寵妃の口づけは、リーファのものとは違い、まるで熟した果実を味わうかのようで、激しく情熱的だった。


 衝撃でレンリが固まっていると、涙目のライラはレンリの唇を解放した。けれど、その代わりに、レンリに寄りかかる。

 その豊満な胸の柔らかさをレンリは感じ、うろたえた。同時にその肢体が、大勢の翼人たちに好き放題にされたという事実も思い出す。


 リーファをちらりと見ると、顔を真っ赤にして固まっている。


 ライラは悲しそうな、それでいて妖艶な表情で、レンリを媚びるように見つめる。


「あたしのような汚れた女に口づけされて、嫌だったでしょう?」


「め、滅相もございません。むしろ嬉しいぐらいですが——」


 と言いかけて、レンリは失言に気づいた。リーファがジト目で「レンリさんって意外と女好きですよね」とつぶやいている。


 ライラは顔を少し明るくした。その表情は、これまでと違って、まるで子どものようにあどけなく、そのことがかえって恐ろしかった


「なら、あたしのことを抱きたい?」


「い、いえ。ライラ様は、先帝陛下の妃であられます。どうして私などがそのような恐れ多いことを……」


「もう翼人に散々弄ばれたもの。一日に、四、五人は相手させられたかな。あたしは汚れきっているの」


「そんなふうに自分を傷つける言葉をおっしゃらないでください。ライラ様の帝国の妃です。そのことに変わりはありませんし、私はライラ様を汚れているなんて、まったく思っていません」


「でも、もう先帝陛下はいないわ。あたしは……生きている意味なんて無いの」


 ライラの精神状態は極めて不安定だ。当たり前だ。翼人の激しい凌辱を受け、そして、帝都は失われ、先帝陛下もいなくなった。


 皇太后として扱われるというのも形だけ。自分の存在意義を見つけられず、翼人に汚されたという苦しみを背負っている。


 このままでは、ライラは自死するかもしれない。リーファが即位した後、自ら命を断つのは、十分に考えられた。


 どうすれば良いだろう?

 リーファを、レンリはちらりと見た。リーファには、後で説明するしかない。


 レンリはライラを強引に抱き寄せた。

 ライラはびっくりしたようだったが、抵抗しなかった。


「ライラ様は汚れてなどいませんし、生きる意味がないなんてこともありません。お腹の子は私の子として育てましょう」


「そ、それって……」


「ライラ様さえよろしければ、私の側室となっていただけないでしょうか?」


 リーファには後ろめたいが、後宮の側室を増やさないといけないのは、彼女も認めることだった。

 先帝の妃ではあるが、現王朝は皇帝の死後、妃が再婚することを認めている。先帝も先々代の後宮から若く美しい妃を受け継いだ。


 とはいえ、ライラの政治的な立場から、他の男に再婚することも難しい。女帝の義母という立場を利用される可能性があるし、翼人に汚された彼女に引き受け手はいない。


 そうだとすれば、レンリがライラを側室とするのは、現実的な選択だった。腹の子をレンリの子とすれば、ライラの不名誉も軽減される。


 ライラは命をかけて、囮となってくれた。この先も、後宮で、リーファとレンリのために力を尽くしてくれるだろう。


 もちろん、レンリにとって、ライラが魅力的な女性だからでもある。 

 ライラは恥じらうように、目を伏せた。


「あ、あたしなんかでいいの?」


「必ずライラ様のこともお守りします」


 ライラはじっとレンリを見つめ、そして嬉しそうに微笑んだ。


「そうね。それなら、次の子どもはレンリの……いえ、レンリ様の子どもを産ませてください」


 そう言って、ライラはそっとすがるようにレンリに抱きついた。













☆あとがき☆

レンリはリーファやライラたちを幸せにしつつ、ハーレム構成員はこれからも増やしていきます…!


面白そう、続きが気になる……という方は、


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