第40話 側室は認めますけれど
レンリは驚きのあまり、リーファをまじまじと見つめた。
リーファはかあああっと顔を赤くする。
「で、リーファ殿下が……妊娠!?」
露出度の高い格好のままのアイカが、うろたえた声で言う。
「そ、それってお二人が……そういうことをされていたってことですよね?」
「そ、それの何が悪いんですか!? わ、私はレンリさんの妻なんですから!」
「悪いことはないですけど、お二人とも積極的だなあと思ったんです」
「アイカさんだって、レンリさんに無理やり迫ろうとしていたじゃないですか!」
」
リーファは顔を真っ赤にして言う。アイカは俺の方を向き、じーっと俺を見た。
俺もいたたまれなくなって目をそらす。
「わたしには手を出してくれなかったのに……殿下ならいいんですね?」
「い、いや、それは……アイカは俺の弟子で、しかもまだ13歳だし」
「リーファ殿下だって、まだ17歳でしょう? しかも皇女殿下なのに……」
アイカがむうっと頬を膨らませて、俺を上目遣いに見る。
そして、すっと俺の耳元に顔を寄せた。アイカは妾の格好……つまり、胸と下腹部のみを薄布で覆った扇情的な格好だ。
レンリはどきりとする。
「わたしのほうが先にレンリ様のことを好きになったのに、ずるいです」
そう言うと、アイカはえいっとレンリに抱きつき、その小さな唇をレンリの唇にふたたび重ね合わせた。
レンリはアイカから身を避けるべきだったのかもしれない。リーファの目の前で、アイカと口づけするなんて、とんでもないことだ。
けれど、そうできなかったのは、アイカの瞳にうっすらと涙が浮かんでいるのを見て取ったからだ。
ちらっとリーファを見ると、リーファもジト目でレンリを睨んでいる。
(こ、これは修羅場……?)
リーファが、はあっとため息をつき、そして微笑んだ。
「目の前で浮気されるのは、私も面白くないですね」
「り、リーファ様……俺はべつにそんなつもりは……」
「浮気なんてするつもりはないのはわかっていますよ。でも、アイカさんはレンリさんのことを大好きで、レンリさんはきっとその好意を拒めないだろうなって思うんです」
アイカはそっとレンリから離れ、大きくうなずいた。
そして、リーファは思案するように腕を組む。
「まあ、その……アイカさんのことは、私も妹みたいに思っているんです。短い間ですけど、一緒に命の危機を乗り越えて、一緒にレンリさんのことを好きになったので……。だから、ですね」
リーファはためらうように、そこで言葉を切った。彼女の意図がわからず、レンリとアイカは顔を見合わせた。
リーファは頬を赤らめて、目を伏せる。
「レンリさんは皇配として、帝国を導くわけですから……どちらにしても側室の一人や二人いないと困ります。アイカさんだったら、ともにレンリさんを支えていけるんじゃないかって私は思うんです」
それはつまり、アイカがレンリの側室になることを認めるということだった。レンリは驚いた。
たしかに、リーファが皇帝につけば、レンリはその夫として帝国の玉座にともにつくことになる。
そして、そうなったとき、後宮を維持することを考えると、レンリの側室が必要になる。歴代の皇帝はみなそうしてきた。
今回はリーファが女帝となるという特殊事情があるわけだが、それでも後宮の仕組みは変わらない。
いざというときには、レンリと側室の子が、帝国と皇位継承者を支える藩屏となることも期待される。
「し、しかしですね。リーファ様……」
「私とアイカさんだけじゃ不満ですか? だったら、サーシャさんも……」
「そんなこと言ってません!」
「冗談です。でも、わたしが子を孕んでいるあいだ、レンリさんも我慢できないでしょう? だって、私とレンリさんは毎日愛し合っていたのですから」
リーファはいたずらっぽく片目をつぶった。
本当にこれでいいんだろうか?
レンリは、そう考えたけれど、当のアイカは嬉しそうに「これからもレンリ様のそばにいていいんですね!」と嬉しそうにしている。
レンリの希望としては、アイカには科挙に合格して官僚になってほしかったのだけれど……。
だが、当事者のりーファとアイカは納得しているようだった。
リーファがレンリに耳打ちする。
「それより、レンリさん。言うべきことがあるんじゃないですか
そうだった。
リーファがレンリの子を妊娠したというのが話の始まりだった。順調に行けば、その子が次の皇帝になる。
レンリは口を開こうとし、今度はリーファの唇に口を塞がれた。
リーファは情熱的な口づけをした後、くすっと笑う。
「アイカさんやサーシャさんがレンリさんの側室になるのは認めます。でも……レンリさんの一番は、私なんですからね?」
☆あとがき☆
サーシャもそのうち側室入り……?
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タイトル:女神な北欧美少女のクラスメイトが、婚約者になったらデレデレの甘々になってしまった件について
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