央都剣・魔術学校
剣・魔術学校は、央都の西部に位置していた。
「ここがお前らが通うことになる学校だ」
学校は柵で全体が囲まれており、正面から見て一番前に大きな噴水があった。さらに奥には校舎が構えられていた。門には央都剣・魔術学校と書かれていた。
「門も開いていないけれど入れるんですか?」
「入学前の見学とでも言えば入れるだろ」
門の横には守衛がいた。
「学校見学をしにきたんだが、入れてもらうことは可能か」
「ようこそ、見学の前にこのリストに名前を記入お願いします」
リストに俺とハルタは名前を記入した。今日の欄にはもう既に何名かの名前が記されていた。
「校舎などの建物に入ること以外なら見学は可能ですのでごゆっくりどうぞ。ただいま生徒たちが模擬戦闘訓練を行なっているので、せっかくですから特別に試合場へ入ることは許可とします」
俺たちは守衛に礼をして、学校の敷地に足を踏み入れた。間近で生徒たちが戦う姿を見れるなんて貴重だ。
「私がいた頃とそんなに変わらないな。正面に見える大きな建物が校舎だ。その後ろの敷地に学校の様々な施設がある。まず模擬戦闘訓練をやっているらしい戦闘場へ向かうぞ」
そういえばノルデンはここの学校出身であった。
戦闘場はコロシアムのような円形の建物になっており、大きさとしてはサッカーコート一面分くらいあった。俺たちは観客席へと上がった。戦闘場は半分に分けられていて、半分は魔術もう半分は剣術を使って模擬戦闘訓練が行われていた。
「すごい、みんな早いし、一振りの威力強い」
ハルタが驚いて言った。剣術の生徒たちは俺の目では追うことができないくらい早く剣を振っていて、みんな動きが軽やかだった。試合場には剣が混じり合う音が絶え間なく響いた。
「剣術もいいがあっちもみろ」
ノルデンが視線をもう半分のコートに目を移した。
一方の半面では魔術を使った戦闘が行われていた。生徒同士はある程度お互いに距離をとってお互いに魔法を詠唱し合い次々に魔法による攻撃を生み出していた。現実世界では不可能なようなことを行いながら戦っていたため魅力的だった。
「まあでも一通りみた感じ私の学生時代を超えそうな剣術使いはいないな。魔法は苦手だったから彼らには劣るだろうが。剣術のパターンも単純でまだまだだ」
「あれでまだまだって……」
俺は驚きを隠せなかった。
「実際の戦闘では敵はあんなに単純じゃない」
ノルデンが数々の経験をしてここまで成り上がったことの凄さが良くわかった。
「本当にあんな風に俺たちは一年後なれるんですか、ノルデンさん」
ハルタが聞いた。
「それはお前らの努力次第だ」
一試合観戦したあと戦闘場から出てそのほかの施設も見た。敷地内には学生寮が存在した。なぜノルデンに学生寮に入らせないのかと聞くとその理由は学生寮は規則が厳しいせいで自由度が低く、入寮の料金が高いかららしい。ノルデンが言っているのだから本当なのだろう。
「とりあえず一通り見終えたな。どうだった実際に見てみて」
「模擬戦闘が1番驚きでした。俺もああいうふうになれるといいんですけど」
「ま、日々精進することだな。お前ははどう思った」
ハルタに問いかけた。
「模擬戦闘はは凄かったですけどあの人達なんてすぐに超えて強くなってやりますよ」
「随分余裕だな。まあいい意気込みだ」
門へと向かっていると反対側から、生徒ではない同じ位の年齢に見える人が歩いてきた。俺たちよりも品の良さそうな服を着ていて、身だしなみが整えられていたので、明らかに高貴な身分の人間だとわかった。するとすれ違う際、わざとらしくぶつかってきた。
「おっと」
「すみません」
とりあえず謝った。とはいえ、失礼なやつだと思った。
「いきなりぶつかってくるとは失礼な、お前下流階級のくせに調子に乗るなよ。俺を誰だと思っている」
彼は俺を睨みつけてきた。
「お前が誰だか知らんが、道は広いんだからもっと距離を持って歩けばいいだろ。頭が使えないのかお前は。それに下流階層だからといって何が悪い」
ノルデンが口を割って入ってきた。
「俺の向かってお前呼ばわりとはいい度胸だな。来期俺はこの学校に、首席で入るんだぞ。舐めるなよ」
俺は首席という言葉を聞いて驚いた。
「首席で入る割には、剣を振っていそうな筋肉もついていなさそうだし魔力もそこまで感じられないな。お前もしや金でここに入ろうとしているのか」
「なんだと、そんなわけないだろ。お前らとは話にならん」
そう言って彼は校舎の方へ歩いて行ってしまった。
「なにをしたかったんだろうな」
「ああいう能無しはこの世界にごろごろ転がっているから困るな。おそらく上流階級だからといって金を駆使して入ったんだろう」
「そういえば俺たちはどうやってここに入るのを許可してもらえたんですか?」
「私の推薦だ。一応元生徒だったからそのつてでお願いしといた。本来ならば書類選考と面接が行われる」
「そんなことをしてくれていたとは。毎回手をかけさせてしまってすいません」
やはりノルデンはいい人だ。
「なあに、どうってことない。お前らは村の恩人だからな。そういえば入学まで少し時間があるが、どうせすることもないだろうから剣術の稽古をするっていうのはどうだ。先に剣術に触れておくだけでも上達が早くなるぞ」
「是非お願いします師匠!」
「困るからそんな師匠なんて呼ぶな。タツキは?」
「もちろんおねがします」
稽古という響きは新鮮で楽しみだ。
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