いざ央都へ!
昨日のことがあって疲れたからか、俺が起きると時刻はもう昼になっていた。ハルタはいつものようにまだ眠っていた。ハルタを起こし、身支度を整えたあと、いつも通り食堂へ向かった。
「遅いぞお前ら、もっと早く起きろ」
「すみません、もう準備は出来ました。お待たせしました」
「早く行こうぜ村長さんのところへ」
ハルタはノリノリだった。
「小僧、感謝されるからと言ってでしゃばるな」
こうして俺たちは村長の村へと向かった。村長の家は村にある沢山の家の中でも一番大きく豪華な装飾が施されている家だったので一目でわかった。
ノルデンさんはドアをノックし、家へと入っていった。それに俺たちも続いた。中に入ると使用人と見られる方が出てきて、客室間へと案内された。客室間には二つのソファが向かい合ってあり、一方には村長と見られる人と昨日助けたサリアが座っていた。
「ようこそいらした。どうぞ腰を掛けてくだされ」
俺とハルタは並んでソファに座った。ノルデンはソファの横に立っていた。
「昨日は娘がさらわれそうになっているところを助けていただいたとノルデンから聞いた。なんとお礼をしたらいいか」
「お礼なんて、俺たちは当然のことをしただけです。それよりサリアさんには怪我はなかったでしょうか」
「ああ、そなたたちのおかげで怪我はひとつもなかった」
「村長さん、一つ質問していいですか?昨日の緑色の俺たちが倒した集団はゴブリンであってます?」
ハルタが聞いた。
「ああ、そうじゃ。彼らはこの大陸の至るところにおる。奴らは盗みや人身売買などの悪を働いて金を得ておる。この村でも年に数回昨日のようなことが起こって困っておるのじゃ」
「それはひどい、許せないですね!」
ハルタが言った。
「村では男たちに代わり番で見回りをさせておる。それでも防げないものはある。じゃが、昨日そなたたちが倒してくれたおかげで当分は近寄って来んじゃろう」
「なら良かったです」
「ノルデンから聞いたがそなたたちユグドラシルへ行きたいんじゃろう?礼と言ってはなんだが、ユグドラシルまではわしらが全面協力しよう。あとそなたたちに必要そうな物をここに入れておいた。ぜひ受け取ってくれ」
俺たちはそれぞれ革製の小さなリュックサックを受け取った。リュックサックは思ったよりも重く、沢山のものが入っていることが分かった。
「中身は旅の途中にでも確認すればよいじゃろう。もし早くユグドラシルにつきたいのじゃったら今日の夕方にでも出発するとよい。竜車はもうすでに用意してある」
竜車という言葉はよくわからなかったがおそらくこの世界での交通手段だろう。
「何も小僧どもはわからないだろうから、私もついていこう」
ノルデンが横から言った。
「はい、是非とも今日の夕方出発させてください」
ハルタを見るとハルタも頷いた。
「わかった、ではノルデン後は頼んだぞい」
俺たちが村長の家を後にしようとしてきた時、サリアが俺とハルタを引き止めてきた。
「お兄さん、き、昨日は助けてくれてありがとう……」
「どういたしまして、これからは気をつけるんだぞ」ハルタがにっこりと笑った。
「あのお兄さん、どうかお礼にこれを持ってってください」サリアは紫色輝いたペンダントを2つ俺に渡してくれた。
「これはなんだ?」
「これは村に代々伝わるお守りです。必ずやいつか役立つはずです」
「そんな大切なものをありがとう。これからずっと身につけておくよ」
俺たちは受け取ったペンダントを首にかけた。
「ではお元気で」
俺たちが宿に戻ると宿の前には村長の言っていた竜車と思われるものがあった。後ろには荷台があり、その荷台はトカゲのような生物に繋がれていた。
「この竜みたいなのははジャイアントサーマンドラと呼ばれる生物だ。こいつが今回お前たちを央都まで運んで行ってくれる。少しでもいいから、触れ合っておくといいだろう」
「この子に名前とかあるんですか?」
俺は名前を知っておいた方が仲を深めることができると考えた。
「こいつの名前はヨーテルだ。人に対しては懐っこいからすぐに仲良くできるだろう」
ノルデンは宿屋の中へと入っていった。
「ヨーテルこれから少しの間だがよろしく頼む」
「よろしく頼むぜっ、ヨーテル」
ハルタは彼のことを優しく撫でた。
「ドーウドーウ」
低い鳴き声で言葉を返してくれた。
ハルタがヨーテルと触れ合っている間、俺は後ろについている荷台を見て回った。荷台の中には藁わらが敷き詰められていてその上になかに何かが入っている箱や袋が置いてあった。置いてあるものの量からして央都へはそれなりに時間がかかかるようだ。
俺はハルタに声をかけて一緒に宿へと戻った。
宿の中では何やら忙しそうにノルデンがあちこち動いていた。
「お前たち、何か央都へ持っていきたいことがあったらシーナに言いな」
「わかりました」
ノルデンは上へと上がっていった。それと入れ替わるようにシーナが2階から降りてきた。
「おかえりなさい、ノルデンさんから聞きました。今日央都へ立たれてしまうのですね」
「はい、とても別れ惜しいです。央都へは何をもっていけばいいでしょうか。何か必要なものがあった教えていただけませんか」
「わかりました、準備の方は私がしておきますからいすに座って待っていてください」
シーナは二階へと上がっていった。
ハルタと話して待っていると数分して2人揃って戻ってきた。
「準備はできたかお前ら」
「準備なら私の方がすませておきました。私が個人的に必要そうと思うものはまとめましたので特にこれといって欠けるものはないと思います」俺たちはシーナから袋を受け取った。
「準備していただきありがとうございます、俺たちは準備万端です」
「よし央都へ向かうぞ、竜車の後ろへ乗れ」
俺たちは宿を出て竜車の2台に乗った。ノルデンは竜車を操縦するためにヨーテルの上に乗った。
竜車に乗ると後ろからシーナが声をかけてきた。
「短い間でしたがとても楽しかったです。またぜひサザンカ村へぜひ遊びに来てください、その時はまたみんなでおいしいご飯を一緒に食べたり、お話をたくさんしましょう」
「こちらこそありがとう、これからシーナさんと呼ぶのは面倒くさいからシーナって呼んでもいいか?」
ハルタが聞いた。
「ええぜひ私もタツキとハルタと呼ばせてください」
シーナは満遍の笑みで言った。
「そろそろ竜車を動かすぞ」
前の方から声がかかった。声がかかると竜車が動き出した。
「タツキ、ハルタお元気で!」
シーナは手を振ってくれた俺たちもそれに応えるように手を振った。こうして俺たちはサザンカ村に別れを告げた。
竜車は藁が敷いてあるか振動はあまり感じられず快適だった。俺は竜車の先頭へ行った。
「ノルデンさんこれからの予定を教えてください」
「ああ、ざっくりというぞ。これから央都へは一度も止まらずにいっても一日はかかる。それではヨーテルに負担をかけてしまうから、明日の朝になったら一度止まって休憩する。それまだはひたすら一本道ですることもないだろうから寝ているといい」
「わかりました、何かあれば言ってください」
俺が後ろの荷台に戻るとハルタはもう眠っていた。俺は寝る前に村長からお礼としてもらった袋の中身を見てみることにした。
袋の中には小刀と衣服その他に何かが入ったポーチが入っていた。ポーチを開けてみるとそこには金銀銅色に輝いたコインが入っていた。おそらくノルデンがこの前話してくれたトナスだろう。
中身を数えてみると中には金トナス三枚、銀トナス五枚、銅トナスが八枚入っていた。この前の話によると銅トナス3枚でりんご一個の値段と言っていたから300円弱あるのは確実だが、金トナスと銀トナスの価値がわからない限りなんとも言えない。明日の朝にでもノルデンに聞いてみようと思う。
その後ほかの中身を一通り確認し終えたあと、俺は眠りについた。
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