決めるのは自分
シヨゥ
第1話
何時何時勝負をかけるかは自分次第だ。自分の持てるすべてを賭けて勝ちを掴みに行く。
「あーあいつの話なんて聞かなきゃよかった」
それを他人任せにしたがために彼はすべてを失った。まだ自分で決めて失ったのなら後悔も少ないだろうが、他人に流された結果では後悔も大きい。
「その時と思っていなかったんだろう? ならなぜ賭けた?」
「だってあいつの話がすごく理路整然としていてさ。納得しちゃって。俺の勘でここじゃないとわかっていても、頭がそれを正しいと思い込んでいて手が出ちゃってさ。あーもう」
彼は落ちていた石を蹴飛ばす。
「最近のお前はブレすぎなんだよ。昔はそうじゃなかっただろう。周りの雑音に惑わされず、ここと思ったところをまっすぐに突き進む。そういう奴だったじゃないか」
「あの頃は良かったな。若さで突き進んでいた感じ。何を言われても俺が正しいみたいなさ」
「そうそう」
「でも年を食うとダメなのよ。いろいろ経験して、細かい失敗積み重ねて。やっぱ他人の話は聴かんとダメだってなってくるんだ」
「自信が失われていくのか」
「そうそう。そして自分の勘が信じられなくなって、納得できる話があるとそれを信じてしまう。そして今日はそのせいで素寒貧よ」
彼は悲しげに笑う。
「それじゃあ今日の失敗を糧にして、これからは他人の話は話半分で聞くべきだな」
「それもなんか悪いな」
「悪い?」
「せっかく俺を思って時間を割いて話してくれているわけだろ。だったら真面目に聞いてやらないと」
「それがもしお前を貶めるために話しかけに来ているんだったら?」
「えっ?」
下がっていた顔が持ち上がる。
「今日に関してはだが。お前と話していたあいつ。お前の対戦者側の人間だったぞ」
「マジか……」
「いつもそうじゃないがな。そういう奴もいる。それに最終的に決めるのはお前だ。お前がブレなければ勝ち易いだろう。そういう奴なんだから。お前はさ」
「決めるのは俺……たしかにそうだな」
「他人に左右されて後悔するより、自分で決めて後悔しろ。これはお前の言った言葉だぞ」
「言ったな。たしかに。今の今まで忘れていた。そんだけ自信を無くしていたんだな」
そう言うや彼は自分の頬を張る。
「初心に帰ってやり直してみるわ」
彼の顔は晴れやかになっていた。
「その意気だ」
「よし。まずは取り戻すぞ」
再び火のついた彼は強い。きっとあらゆるものをねじ伏せて、勝ちを積み上げるだろう。
決めるのは自分 シヨゥ @Shiyoxu
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