赤狐
銀ビー
赤狐
一人の
時は平安、所は朱雀大路の南の果てにある羅生門の更に外。魑魅魍魎が跳梁跋扈する、現世と繋がる異界である。
武士の前には一匹の
「ふむ、なぜそこまで抗う」
妖が武士に問う。
「当たり前だ、妻や子を護るためにもこの先に進ませる訳にはいかん」
「何故だ?妾はそなた達を救ってやろうというのに何を拒む」
「救うだと?都の人々を気紛れで殺して回る事の何処に救いがあると言うのだ。恨みを、哀しみを生むだけだ」
「主らは気づいておらぬのか。その体に命がある限り無限の可能性を秘めた
「それこそが貴様の勝手であろう。お前の言う
「なんと頑なな。それこそが
「煩い。貴様の言い分など聞く耳持たぬわ。ここでけりを付けようぞ」
「争い殺すもまた人の業であるか。よかろう、此度は妾が一度退こう。そなたの生き様を眺めるのも一興であろう。代わりにそなたが生を諦め、
「何!本気か。本当に都を諦めてくれるのか」
「妾がお主を謀る理由はないであろうに。全てはお主の腹一つと心得るがよい」
そう言うと赤狐は宙を蹴り天空高く消えていった。
「・・・助かったのか」
武士は力尽きその場にしゃがみこんだ。その双眸からは涙滂沱と滴り、暫くは動く事も叶わなかった。
「くっ、帰らねばな。おね、さえ、お
武士は傷つき歩くことも困難な体を刀で支えながら門を潜り都へ向かい歩く。
妻が幼い我が子を手にかけ、間男と逃げた事など知る術もなく。
三日後の都の大惨事を生き延びた者は口々に語った。
「赤いキツネが空を飛んでいたんだ」と
赤狐 銀ビー @yw4410
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