第34話 弁護士相談
弁護士さんとの相談ですが――ぶっちゃけた話、楽しかったです(笑)
母の死に際のことや遺された負の遺産、あと「これから、サイコパスと正論パンチマンに挟まれて生活するのか~」という憂いや、元上司と引き離されるストレスなどなど……正直結構、気分が塞いでいました。
しかし弁護士さんと話している内に、色々な事が綺麗に整理整頓されていったと言うか――かなりスッキリしました。
私はまず、登記事項証明書とライフラインの滞納通知を見せながら、「兄と姉の住む場所がなくなるので、どうすれば良いか困っています」と相談したのです。
少なくとも金融会社の抵当権が付けられていると言うことは、恐らく近い内に競売にかけられるでしょう。
ただ競売にかけられたところで、当然すぐに売れるとは限りません。
そもそもが田舎ですし……田舎だけあって土地は広いんですけど、家屋は築40年以上。耐震補強なんてされていません。
だからその、「売れるまでの間」なら家に住み続けても問題ないはずなんですよ。
売れたからと言って即日立ち退きを求められるのではなく、数か月間の猶予くらいあるでしょうし。
――そこまでは相談するまでもなく、なんとなく察していました。
ただ一番の問題は、ライフラインの滞納なんですよね。
いくら同居していたからと言っても、母名義で契約しているものを、兄や姉が支払うことはできません。
それをすると「単純承認」という――端的に言えば「私、遺産放棄なんてしません! 借金も全部受け入れます!」と宣言する行為に当たるんですね。
「これは欲しいけど、それは要らない」なんて取捨選択は、基本的にできませんから。
つまり本来、即日家を出る必要はないけれど、どっちみち母名義の借金 (滞納)である、ライフラインの支払いができない。
その支払いができないとなると、たちまち12月の半ばには電気すらストップする状況です。
屋根があっても、真冬に電気がなければまともな生活を送れません。極寒の真っ暗闇の中を、手探りで暮らすことになります。
灯油ボイラーだって結局は電気がないと動かせませんから、お風呂も入れませんね。
だからこそ、「ましろの家を貸してくれ」と言ってきた訳です。
――私の話を聞いた弁護士さんは、至極当然のように「母は亡くなりました。私達は遺産放棄しましたから、母名義の滞納分は一銭も支払うことができません、と伝えてライフラインを全部切って下さい」と。
そして、「私達の名義で新規契約し直しますって言えば良いんですよ。そうすればライフラインは復活して、今の家にそのまま住み続けられますから」と続けました。
私は思わず、「えっ、そんな面の皮の厚い真似して、平気なんですか?」と訊ねました(笑)
だって別居していたならまだしも、兄と姉は母と同居していて、電気も水道も利用していた訳です。
それを「母名義だから払えません! でもライフラインは止めないで下さい! 僕らの名義で新規契約して、これからはちゃんと支払うんで!」って……良いのか、それ? と(笑)
――聞けば、そういったライフライン系は「新規契約」を拒絶できないようになっているのだそうです。
まあ、供給されないと命に関わるものですし……定められた「供給義務」があって、正当な理由がない限りは締結を断れないんですって。
だから厚かましかろうが何だろうが、「払えないものは払えない、何故ならば遺産放棄しているから――というスタンスを崩すな」と、大変ありがたいアドバイスを頂戴しました。
家や土地については抵当権と差し押さえがついているので、やはり競売にかけられるだろうと。
ただ場所も場所だし、家は古いし価値がつくかどうか――競売にかけるだけ無駄に管理費用がかかるとなれば、抵当権すら手放される可能性があると言われました。
とにかくこのまま住み続けて、「退去勧告が届けば出て行く」ぐらいで十分だと説明を受けました。
その時点で私は「やったー! じゃあ同棲は解消しなくて良いし、兄姉の板挟みにならずに済むぞ!」と大喜びです(笑)
次に相談したのが、母の今までの借金や各種滞納分だったのですが――これもまあ、「遺産放棄したのだから払えない、私たちは関係ない、で済む」と。
遺産放棄の手続が受理されると、家庭裁判所から通知書が届きます。
それをコピーして各所へ証明書として送れば、督促もピタリと止むそうです。
また、母が所持していた現金について。
これは「あまり大きな声では言えないけれど」という前置き付きで、「そもそも現金をいくら所持していたかなんて、誰にも証明できません。例え亡くなる直前に故人の口座からお金が引き下ろされたばかりだとしても、「知りません」で通用します。「知りません」または「本人の火葬代、法要代に利用しました」です」と言われました。
故人の未支給年金についても、「相続」には当たらないので、年金事務所で手続きすれば受け取れると。
――あ、ただコレ、時期によっては故人の口座宛てに、入金予約がされちゃっているんですよ。だいたい、入金日のひと月前には予約されているそうです。
サクッと口座を凍結していないと、大変なことになります。
恐らく遺産放棄せずに普通に「相続」する方々なら、相続の証明書さえあれば故人の口座からでも、問題なくお金を下ろせます。
ただ我が家のように遺産放棄するとなると――故人の口座に振り込まれた時点で、「未支給年金」ではなく「故人の預金」、つまり遺産となります。
だから故人の口座を凍結しないまま入金されちゃうと、もう二度と、誰にも引き出せません。
――どうしてそんなに詳しいかって?
これね……年金事務所の職員さんと我が家の間で、悲しい齟齬がありましてね……受け取れなかったんですよ、未支給年金20万円。
ただ口座を凍結していなかっただけの阿呆なんですけどね。まあ、やらかしの詳細は次話ぐらいで!
本当に、「祟りか?」というぐらい凡ミス、ヒューマンエラーが続きました(笑)
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