第33話 相談内容まとめ
――ただ、いくら弁護士と話したことがあると言っても、自己破産とは違いますからねえ。少々気が重かったです。
遺産放棄するのは人生初。
しかも放棄するに伴って、他の相談窓口が「ウチの手に余る」と拒絶するほど、複雑な家庭環境がまとわりついてきます。
恐らくたらい回しにした方々も、電話口じゃなくて対面相談だったら、匙を投げなかったと思うんですよ。
電話のみで伝えるには難易度が高すぎます。図でも書きながらじゃないと(笑)
私はひとまず、通いやすい位置にある法律事務所をネットで探しました。
すると実家の近所に、丁度いい事務所を見つけて。
40分間で相談料5,000円――ただし、一定の収入以下だった場合は、法テラスの制度で無料相談できるよと。
前話でも当然のように書きましたが、「法テラス」とは日本司法支援センターのことです。
国によって設立された、法的トラブル解決のための総合案内所。
様々な法的トラブルを抱えた時に、「どこへ相談すれば良いんだ!?」と悩みますよね。
下調べなしで適当な法律事務所へ行って、「ウチではそういう案件を扱っていない」とたらい回しにされたら、悲しいですから。
法テラスは、そうした問題に行き当たった際に、解決までの道案内を担ってくれます。
しかも経済的な理由で弁護士に相談、依頼ができない――という場合に、手厚い支援までしてくれるんですね。
ちなみに私は、自己破産した際にめちゃくちゃお世話になりました。
借金の返済ができなくて破産するぐらいですから、弁護士費用なんて用意できるはずがないんです。
なんとか費用を工面したくても、破産手続きを開始した時点で、新規ローンは一切組めませんから。
「じゃあ、破産直前に消費者金融で弁護士費用を借りる!」というのも、債務整理の回でお話した通り――「返済するメドがなく、返すつもりもないのに借金をした」という悪質な行動をとれば、そもそも自己破産が認められません。
そんな時、救済措置してくれるのが法テラスなのです。
必要な弁護士費用の立替を行ってくれるので、私の場合は月々3,000円程度を法テラスに返済するだけで済みました。額は依頼内容や状況によりけりです。
結局、何年ぐらい支払っていたのかな……3年か5年ぐらい……?
ちょっと正確に覚えていませんが、かなり特殊で限定的なローンみたいなものだと思ってください。
ちなみにこの返済、当時お世話になった弁護士先生から「月々3,000円って、めちゃくちゃ好待遇なんです。これ滞納すると、マジでやばいですよ。くれぐれも注意してください」と脅されました。
まあ、当然ですよね……国や裁判所まで関わっていますし。
さて、すっかり話が逸れてしまいましたが――法テラスの名前もあるから、もし何かしらの依頼をすることになっても、ここなら安心だろうなと思いました。
何せ私――ホテルを退職してからというもの――短期の派遣でコロコロ転職して、毎日遊ぶように働いておりますので(笑)
色んなお仕事を経験するのが楽しくて、せっかく契約更新のお話を頂いても、ついつい放浪してしまいます。来年の春あたりから本気出す。(たぶん出さない)
電話で相談の予約を取り付けて、私はひとまずノートに相談内容を書き出しました。
たった40分しかないのですから、しっかりと順序立てて相談しなければ、必ず漏れが出ます。
まず最重要なのは家と土地。
土地や家屋の名義がどうなっているのか調べるため、「法務局」というところで、「登記事項証明書」という書類を出してもらいました。
土地や家屋の所有者が誰になっているのか、明記されているのです。
それを見ると、どうも実家は亡くなった父母が2分の1ずつ所有していることになっていました。土地は母のみが所有者で。
ただし家と土地には、金融会社に抵当権がつけられているため――しっかりと「500万円」という金額が記されていましたね。
あと驚いたのが、母が国民健康保険を数年分滞納していたせいで、市に差し押さえされていました(笑)
抵当権&市の差し押さえ。とんでもない登記事項ですねえ。
私は初めて見る書類でしたので、そもそも見方がよく分かりませんでした。
家や土地をどう処理するかのついでに、弁護士先生に詳しく聞かねば意味が分かりません。
あとは実家の郵便物を仕分けて、母が滞納していたものをざっくりと拾いました。
各種ライフラインの取り扱い。病院や施設の滞納料金や、業者からの請求書など。
これらもどう対応すべきか。何をしてよくて、何をしたら遺産放棄できなくなるのか。
事前にそれらの確認をしておかねば、とんでもないスリルを味わうことになります。
ネットで「遺産放棄」と調べると、少しでも故人の借金を支払ったら、他の借金も全て放棄できなくなる~とか、預金だけでなく、財布の中に入っていた現金にも手を出してはいけない~とか、結構厳しいことが書かれているんですよね。
実は母が亡くなった時、鞄の中に9万円ぐらい入っていて。
姉が言うには「自分が貸していたもので、月末に返してもらう予定だったのに――現金にも手を出しちゃいけないとなると、諦めるしかない」とのことで、かなり凹んでいました。
まあ、母からの返金ありきで諸々の支払い計画を立てていたはずですからね……普通に困るはずです。
とは言え、現金にも触れちゃいけないって――じゃあその現金、どこへ持って行けば公的に「放棄した」と認められるんだ? と首を傾げたくなりました。
だから弁護士先生には、現金の処理の仕方についても教えを乞わねばと。
ついでに言えば、3人兄弟揃って市役所で世帯主の変更届をした際、職員さんから「遺産放棄したとしても、最後の未支給年金だけは受け取れますよ~」とアドバイスをいただいたので……そこの確認もしようと思いました。
貰えるもの、貰えないものは明確にしておかねば! あとで大やけどしますから。
ノートに相談内容をまとめ終えたら、兄と姉に「こんな感じで良い? 他に聞きたいことがあったら今の内に言って」と確認して。
――そうしていよいよ、相談日を迎えました。
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