第3話

俺こと、南山真琴は、休みの日に親友の栗谷美鈴に連れられて、天空カイザーとか呼ばれるアニメの、コスプレ会に強制的? に参加させられてしまい、そこで、色々な女の子に写真撮られて、まあ写真撮られるのは、まあよしとしよう……でも、その後、美鈴がその俺が演じたレキだっけ?そのコスプレ衣装を着た画像を携帯の待ち受けにしたらしい。

うん、勘弁して欲しいというか、出来ればやめてほしいなと、俺は思っていた。

まあ、そんな休みの日が終わり、次の日。

いつもと同じく俺の通っている山野辺高校の登校日。俺は、やっぱりというかいつもの時間に起き、いつもの制服に着替えて、いつもと同じ時間に家を出る。

ここまではまあ、普通の日常だ、そしていつも同じ時間に学校について、昇降口へと入って行くと、下駄箱の前に、立っていた人物がいた、その人物はと言うと……


「おはようございます、南山さん」

そう言ってきたのは、今、俺の悩みの種でもある人物。汐崎美咲であった。何故、この汐崎美咲が悩みの種だと言うと、先日、俺こと、南山真琴に向って「好きです、付き合って下さい」と、言って来たからだ。普通の男なら彼女は結構クラスの中でも人気があり、ファンクラブ、MKFCまであるので、「是非OKです」とか「よろしくお願いします!」とか快く引き受ける事だろう。じゃあ、何で俺が悩んでいるのかと言うと、俺はこう言った話し方だが、正真正銘彼女と同姓、つまり、俺も女の子な訳である。

だから、告白されてどう返事したらいいかと、悩んでいたりもしているのである。


「えっと……おはよう」


俺は、ぎこちながらも挨拶だけはしっかりとした。

すると彼女は、笑顔でこう言ってきた。


「実は、南山さんに言いたい事があるんです」


「は、はい? 言いたい事?」

はて、何だろう? もしかして前回と同じく「彼女にして下さい」とかだろうか?でも、ここは人気のある昇降口、男子生徒や女子生徒だっている。そんな場所で、俺に一体何を言おうとしているんだ? この女は?


「今日のお昼、屋上に来て下さい、お待ちしておりますね? 逃げないでくださいね……」


そう言って、彼女は俺の前から去って行った、彼女に言われた事はつまり……「今日の屋上に来て下さい」だそうだ。

一体……何の用なんだ? しかも最後に逃げないでね……と言いやがった。なんか、逃げたら何されるか分からないよな……俺は、ちょっと恐怖を感じながら、靴から上履きに履き替えて、教室に向かう事にした。

教室の中に入ると、すぐに美鈴が俺に向かって話しかけてきた。


「おっはよ~、まこ~」


「おはよう……」


「どったの? なんか……顔青いけど? 辛いの?」


「いや……別に」

そう言って俺は、自分の席に着く。

席に着いて汐崎美咲の方を見てみると、相変わらず、女友達と会話していたので、とりあえず俺はほっとする事にして、教科書を机に入れる作業をしていると、再び美鈴が話しかけてきた。


「まこー?、昨日はありがとね? 私、本当に楽しかったよ?」


「そう……あ、美鈴」


「何? まこ」


「ケータイの待ち受け、見せて」


「え? いいよ?、はい」

そう言って、美鈴は何も疑わずに俺に、自分の携帯を渡す。美鈴から携帯を受け取ると、中の画像を見た。

携帯の待ち受け画面には、昨日言っていたのと同じく、俺=レキの格好をした姿が収められていたので、俺は即刻、デリートボタンを押して、にこやかにこう言った。


「はい、ありがと、じゃあ返す」


「いえいえ……って、何で画像消えてんの!?」


「自分の画像だから、消させて貰いました、以上」


「ひ、ひどいよーまこー……何も照れて消す事ないじゃんかーー」


誰が照れて消しただ! 全然違うぞ! そう言ってやろうと思ったが、キーンコーンと授業開始を知らせるチャイムが鳴ったので、言うのをやめにした。そして授業もいつもどおりに終わり、お昼の時間。

俺は、汐崎美咲に屋上に来るように言われたので、屋上に向かう事にした。

屋上に向かおうとすると、美鈴が俺に話しかけてきた


「あれ? まこ? 何所に行くの?」


「ちょっと、用事が出来て……」


「え~?一緒にご飯食べようと思ったのにな~? そんなに大事な用事なの?」


「ま、まあ……そうなのかと」


「ふ~ん……ま、いっか~……行ってらっしゃい~」


そう言ってきた、まあ……ついていく~とか言われないだけマシか……俺は、そう思ってしまった。

一体屋上で何が待ち構えているのか?

考えても分からなかったので、とりあえず俺は屋上へと向かう事にした。

屋上に向かうと、春の日差しがかんかんに照り付けていて、ちょっと暑く感じたりもしている、その屋上にいたのは、俺を呼び出した人物、汐崎美咲だった。


「待っていました、南山さん……私、来ないかとおもっちゃいました」


いや、断ったら、どうなるか解ってきたから、来たんだが……何故なら彼女は、ファンクラブまである大人気。その彼女の誘いを断った事をファンクラブのメンバーに知られたら、何されるか判らなかったからな?


「で……一体、自分に何の用……」

俺は、そう聞いてみた、すると彼女は、こう言って来た。


「実は、これを貴方に食べてもらいたくて、来てもらったんです」


そう言って俺に渡してきたものは、お弁当箱らしき物体だった。


「え? お弁当……?」


「はい、貴方の事をおもって、朝五時から一生懸命作ったんです、友達も言ってましたし「ガンガンアタックしていったら?」と、だから受け取って下さい……」


そう顔を赤くしながら言ってきた。

さてどうしよう……これが普通の男なら一発で「よろこんで受け取ります」とか「ありがとう!」とか言うだろう、普通ならばだが?だが俺は、普通の男じゃないし、まず汐崎美咲と同姓、まあ女の子な訳であって、よろこんで貰う理由がないんだよな……別に女の子大好き!とかじゃあないし……


「えっと……自分のお弁当あるし……」


そう、俺は教室にある自分のかばんの中にお弁当を持参していたのだ。ちなみにこの山野辺高校は、給食が無く購買部で買うか、お弁当を持参して来るのが当たり前になっている。

ちなみに俺は弁当持参派だ、自分で作ってはいないけど


「そのお弁当ってもしかして……彼女に作って貰ったんですか!?」


言ってる事がおかしいよ!? 何故俺が彼女がいるとか思われてるんだ?


「い、いや、普通に家族だけど……」


「何だ……そうですか……、良かったです、もし貴方に彼女がいたら、即刻別れさせようと思ったので……」

怖いよ! 何この子!


「じゃあ、これ……貰ってくれますよね……?」


「う、うん……とりあえず……ありがとう」

「いえ、貴方によろこんで貰えてよかったです、あ、あの……」


「何……?」


「貴方の事、まこって呼んでいいですか? 貴方にむかって、栗谷さんが、そう呼んでるのを聞いたので」


「ま、まあそれぐらいなら……」


「ありがとうございます! じゃあ私の事も美咲と呼んで下さいね?」

そう笑顔で言いやがりました、男が見たら一発で惚れちゃいそうな笑顔で


「そ、そう……じゃあ美咲さんと呼ぶよ……」


「出来れば呼び捨てで呼んで欲しかったんですけど……まあ、いいでしょう、あ、じゃあ私、戻りますね?」


そう言って、美咲は屋上から出て行く、残された俺はと言うと、この弁当を食べるか、教室に戻って持参している弁当を食べるか、そう迷っていたのであった。お昼休みが終わるので、お弁当は授業が終わった後に、食べる事に決めた。そして放課後、結局、俺は美咲に貰った弁当と持参していた弁当を両方食べる事にした。

美咲に貰った弁当の中身を見て驚く。

何故なら、ご飯の上に「LOVE」とハートマークが書かれてあったからだ。

うん、かなり恥ずかしい。人に見られたら死にたくなるような恥ずかしさだろ? これ……

だからこそ俺は、人に見られないように隠しながら、両方のお弁当全て完食した、ちょっと、食いすぎてお腹痛くはなったけど……、そして授業も終わり、帰り支度をして家に帰って、ただいまと言うと


「お帰り、お姉ちゃん」

そう言って来たのは、俺の妹である、南山亜季だった。年はそんなに離れてなく、中学生である。妹は、俺と違い、ツインテールの髪をしている事が多かった。

見た目も結構可愛いので、男子がほっとかないんじゃないかな? とか、思うのだが……

家に男子を呼んで「お姉ちゃん、これが私の彼氏だよ?」と言う事は、今まで一度もないので、彼氏は、いないんだと思われる。


「うん、ただいま」


「どうだった? 私が作ったお弁当」

そう……俺は、亜季にお弁当を作って貰っていたりしていたのだ。普通なら、親や自分で作るのだが、何故か亜季が「お姉ちゃんのお弁当は私が作る!」と宣言して、実際に作って貰っている。まあ、亜季は俺と違って料理が得意なので、助かっていたりもしている。


「美味しかったよ、いつもありがと、亜季」


「ううん、お姉ちゃんに喜んで貰えて嬉しいから、毎日作るね?」


うん、お姉ちゃん思いの良い妹だよな、良い意味で、そう言って、自分の部屋に向かおうとすると


「お姉ちゃん……これ何?」


そう言って亜季が指差したのは、美咲に貰ったお弁当箱だった。


「あ、これは……その……お弁当箱」


「何で、お姉ちゃんがお弁当箱持ってるの? 私が作ってあげてるのに……?」


あの……笑顔でそう言ってるけど、なんていうか雰囲気がどす黒く感じるのは気のせいなんだろ~か?


「え~と……その、貰っちゃって」

俺は正直に話した。


「誰から?」


「同じクラスの女子から」


「お姉ちゃん! 何でそんな事になったの!?」


「い、いや……告白されて」


「うそ……お姉ちゃん……、その人の事、好きなの……?」


「好きも何も、同姓同士なんだから、おかしいとは思わないの? 亜季」


「でも、お姉ちゃん……ちょっとかっこいいし……」

妹に顔を赤らめて、かっこいいとか、言われてしまった。俺は、それに対して、どう反応すればいいんだ?


「亜季?」


「お弁当とか、貰ったら断って!私が作ってあげるんだがら!」


「う、うん」


「お願いね!」


「判った……」


「じゃあ、明日もその先もず~っと私が作るからね!」

なんか……独占されてる気分になるのは気のせいだろーか?まあ助かってるから別に問題は無いと思う……

こうして、俺の少し違った日が終わりを告げたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る