12月25日

 暗殺家業から身を引く。

 そう決めたが、依頼主がやってきた。

 驚いたのはその顔だ。

「明理、どうして?」

「わたしが依頼主じゃいやかな?」

「……誰を暗殺して欲しいんだ?」

 この職業に就いてから一度も依頼主を困らせたことはない。

 俺は明理を依頼主として認識した。

「そうね。まずは七丈寺しちじょうじ魔林まばやしを」

 写真を見せてくる。

 確か、こいつは性犯罪者。他にも暴行、拉致、殺人をおこなってきた悪党だ。警察でも見つからなかった相手だ。

「どういうつもりだ?」

 これは暗殺者ではなく、警察が行うことだ。

「いいじゃない。父の遺産でできることと言えば、このくらいなんだし」

「……」

「それがダメならプロを雇った意味がないもの」

「了解した。魔林を殺す」

 これが最後の任務だ。

 いや、これからもこの暗殺家業は続くのだろう。身体に染みついてしまった。

 でも明理なら、俺を引っ張りあげてくれると信じている。

 いつか。

 必ず。

 君は

 俺を助けてくる、と。


「さようなら、魔林」


 発射された弾丸がガラスを撃ち抜く。

 舞ったガラス片が陽光を浴び、キラキラときらめく。

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暗殺家業02号 ~アドベントカレンダー2021~ 夕日ゆうや @PT03wing

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