12月21日

 明理が話しかけてきた。

「ちょっといい?」

「ああ」

 俺は返す言葉もなくついていく。

「なんでわたしの父を殺したの?」

「俺をターゲットにするからだ。自分の身を守るためにはしかたない」

「うそよ! パパがそんなことをするわけないじゃない!」

 怒りのまま、俺につかみかかる明理。

 にじんだ瞳が揺れる。

「なら。これはどうだ?」

 俺はハッキングしておいたメールを見せる。

 幡生がシロサイに依頼したときのメールだ。

「!?」

 初めて見たという顔の明理。

「これでも信じないなら、音声が残っているが?」

「いい。パパは裏の販売ルートを持っていたとも聴くわ」

 事実を信じていなかった明理がポツポツと語り出す。

 それでも、明理にとっては良き父だったのだろう。

 そんなことを知らない周囲からは恨み言の一つも飛び交う。

「ごめん。わたし、勝手に決めつけていた」

「いや、いい。許してくれるとは思っていない」

「そう、だね……。許せない」

 怒りで拳が震える明理。

 そっと立ち去る。

 これ以上、一緒にいられない。

 明理が泣き崩れるのを横目で見て、立ち去る。

 後ろ髪を引かれる思いだ。

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