12月16日

 方位角二度修正。

「撃て」

 短く発した言葉。

 引き金を引き、発射された弾丸は幡生の頭を撃ち抜く。

 その隣でわめく明理の姿が映る。

 ずきっと心臓が痛む。だが、これでもう暗殺者に狙われる心配はない。

 依頼主が死んだのだ。報酬もでない。それでも殺しにくる意味はない。

 そのはずだった。

 鼻先をかすめる弾丸。

「なに!?」

 俺は驚き、身を隠す。

 廃墟になったここでは、無数の壁が存在する。その壁を砕く音がする。

 まだ狙われている? なぜ?

 身を隠しながら相手の顔を双眼鏡で見る。

 若い。

 まだ若い新人の暗殺者だろうか。手にはロングレンジライフルを手にしている。

 狙撃の腕はまだまだだが、センスがいい。正確な位置取りと、狙いは悪くない。

 ただ実践経験が少ない。

 俺はお返しにスナイパーライフルの引き金を引く。

 発射された弾丸は新人の横にある岩場を崩す。

 その粉塵に消えていく新人。

 やった。

 これで解放される。

 その気持ちで、俺は現場を後にした。

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