11月30日

 わたしには秘密がある。

 その秘密は高校、隣の席の芦田あしだ大介だいすけくんのことだ。

 いつもふらっといなくなって、何事もなかったように授業を受ける。

 その間、何をしているのか、誰も知らない。

 でもわたしは知っている。

 暗殺者ってことを。

 そんな彼と一緒に食べる昼食はおいしい。

「今日も一緒に食べよ? 芦田くん」

「ああ。分かった」

 素っ気ない態度はいつも通り。

 中庭のベンチに座り、弁当二つを開ける。

 片方はわたしの分、もう片方は芦田くんの分。

 パカッと開けると、芦田くんの好物ミニハンバーグが入っている。

「うまいな」

 芦田がそう言うと、わたしの気持ちは高鳴る。

「良かった。手間暇かけたかいがあったよ」

「そうか。しかし、俺にかまけている場合なのか?」

「いいじゃない。わたしはわたしのしたいようにするの」

 芦田くんが弁当を平らげると、ベンチで横になり、眠り始める。

 そんな彼の横顔を見るのが好きだ。

 そっと顔を近づける。


 ふふ。ほっぺにキスしちゃった。

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