第21話 リオノーラ姫の作戦

「よせ、どういうつもりだ!?」

「わたくしが逃げたら、他の者たちに被害が及びます! わたくしたちがオトリになりますから、勇者さまは回復を!」


 ハンドレオンにまたがって、リオはマシラ男爵をにらみつける。


「どうしましたか、男爵? 頭が二つもあるくせに、男らしくありませんね! それともどちらの頭も臆病者ですか?」

「んだと、テメエ! 上等だ! テメエから黒焦げにしてやるぜぇ!」


 円盤の先端に、電撃がほとばしった。また、あの雷撃を飛ばす気だ。


「まって、二連発したから、まだ電撃のゲージが上がってない」


 ツインテ幼女の頭が、警告する。しかし、ゴリラの方は意に介さない。


「あんなクソアマ一匹シメるくらいのパワーがアレば、上等だっての!」

「だったら、しかたない」


 雷が、ハンドレオンめがけて降ってくる。


 しかし、レオンには一発も当たらない。姫の判断力とレオンの脚力によって、見事にかわし続けている。


「ヒャハハ! リオノーラ姫もまとめてビリビリさせちまえ!」

「自分から当たりに行くなんて、バカなおひめさま」


 愉快そうに、マシラ男爵は電流を流す。


 とはいえ、リオ姫にまったくダメージを与えられない。


「ゴリラ、やっぱり当たらない。最初からみっちり充電して、広範囲攻撃モードにすべきだった」

「それだと、火力が弱まるだろーが! 一点集中でいいんだよ!」

「だったらさっさと当てろ、へたくそ」

「るっせーんだよ、ガキンチョ! オレサマに任せてればいいんだよ!」


 マシラ男爵同士で、仲間割れが起きている。


 しかし、攻撃までは収まらない。


 リオも必死にかわし続けるが、いつまでもつか。


「姫、危険なマネは!」

「よせ。お前ら、姫の気持ちも考えろ!」


 加勢に向かうジョイスを、俺は止めた。


「なぜ、止めるっ!? 私なら、こんな電流耐えられる!」

「それじゃダメなんだよ!」


 やはり、ジョイスはわかっていなかった。


「なんで姫さんが、俺を呼んだかわかるか?」

「世界を平和にするためだ。お前の力が必要だから」

「違う! お前たち騎士たちを、大変な目に遭わせないためだ!」


 騎士たちが傷ついて倒れていく姿を、リオは何度も目撃したのだろう。


 彼ら騎士にとって、愛する姫のために尽くすのは名誉なことだ。


 しかし、姫自身は違った。ずっと傷ついていたのである。


「お前なんかに、どうして姫の気持ちがわかる?」

「姫が身体の中に入ったときな、わかったんだ」


 俺の中に、姫の思考が流れ込んできたのだ。


「クソが! こうなったら、テメエら行けぇ!」


 業を煮やしたマシラ男爵が、飛行型の配下に支持を出す。

 直接、姫に魔物をぶつける気だ。


 一瞬、リオがしたり顔になったのがわかる。


 刹那、猛ダッシュでリオは逃げ出す。

 飛行型ユニットをひきつけながら。


『おいおいっ。お嬢のヤロウ、誰も傷つけたくないって言っていたが、結局逃げ帰ってきたぜ!』


……それでいいんだよ! 


 飛行形態の魔物たちは、もう目の前に迫っている。


「勇者さま、今です!」

「よっしゃ! チェンジ、ダイデンドーッ!」


 合体を完了させて、俺はミサイルを用意した。


「いくぜ、ミサイル一斉掃射!」


 十分に充填完了したミサイル全二万発を、飛行ユニット共に見舞う。

 しかも、ダイデンドーから発射して、だ。

 トリセツさんも言っていたが、ダイデンドーでミサイルを放てば……。


 空中で、飛行型の魔物たちが灰になっていく。


『ハハハツ! やりやがるぜ、姫様のやつ!』

『ボクの力もお忘れなく!』


 これで、姫の力は見てもらえたと思う。 


「だから俺は、俺たちは、お前たちの危険を少しでも軽減する」

『じゃあ、オレサマはあんたの負担を軽減してやるよ』


 シャドウ号が、俺とジョイスの会話に割って入ってくる。


「どういう意味だ?」

『あのヤロウをぶっ潰す策がある』

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