第23話 撃退、マシラ男爵!

「なにいいい!? フォルネウス 一型がああああっ!」

「わからされるー」


 真円モニタの中で、マシラ男爵が頭を抱える。


 エイの口から、爆風が吐き出された。

 胴体からも、衝撃波と白煙が上がる。

 残骸やら衝撃波やら、爆風やらを撒き散らし、円盤は周辺の浮遊型モンスターも巻き添えにした。


「あっちいいいいいいっ!」

「わからされたー」


 エイ型円盤から、ポッドが飛び出す。

 どうやら、マシラ男爵は脱出したらしい。


 落下したエイの円盤が、地上の敵も巻き込んで爆砕した。

 俺がやっつけた数より、被害が大きいんじゃねえのか?


 ドライディノスは、何もしなかった。

 ただただ燃え盛るマシンを見て、静観している。

 はるか上空にいるから手助けできない、なんて雰囲気ではない。

 ハナから協力する気などないのだろう。


 どっちの手柄とかマウント決めているヤツを助ける気など、俺にもない。

 同情するぜ。


「おぼえてやがれー!」

「ばーかばーか」


 負け惜しみを言いながら、脱出ポッドは虚空へ消えていく。


 変わらず、ドライディノスは戦況を見守っている。

 俺がヤツを倒し、消耗するのを待っていた?

 電流を受けて、動けなくなっていたのか? 


「まだ、続けるか?」


 俺が尋ねると、ドライディノスは初めて俺に気づいたような驚きを見せる。

 こちらに視線を向けたが、すぐに剣を収めた。


「勝負は、預ける。だが、次にあったときは容赦せん」


 そう言い残し、ドライディノスは姿を消す。


「お、お?」


 ダイデンドーが勝手に分離した。俺も、人間サイズへ。


「相当消耗したようだな」

[はいパイロットの安全を確保するため、ダイデンドーの合体を解除いたしました]


 それがいい。俺も限界だった。

 あんなエゲツない攻撃の後に、まだ動けと言われても。


 俺の首に、柔らかい弾力がツッコんできた。


「ありがとー。お前のおかげで、ドワーフの街は救われた」


 抱きついてきたのは、さっき執拗に敵陣へ攻め込んでいたドワーフの少女だ。

 小柄ながら大胆なものを持ってらっしゃる。


 俺がロボでよかった。

 生身だったらセンシティブまっしぐらである。


「あーっ! いけませんドルルさん! わたくしだってヒナトさまにナデナデしていないのに!」


 なぜか、リオがプリプリ怒り出した。


「こういうのは、早いもの勝ち」

「いけません! ヒナトさまから離れてください」


 無理やり、リオは少女を俺から引き剥がす。


「俺はヒナト。あんたは?」

「あたし、ドルル・ゴースミス。今夜はこの街に泊まる」


 姫であるリオではなく、ドルルは俺にばかり話しかけてきた。


「いいのですか?」

「もう夜も遅い。ここでゆっくりするといい。姫やダンデンドーに、話したいこともある」


 リオが、空を見上げる。


 たしかに、もう夕日も沈んでいた。


「わかりました。ヒナトさまもそれでよろしいですか?」

「もちろんだ」


 ドワーフの様子も見てみたい。

 せっかく異世界に来たんだ。冒険しないとな。


「ヒナトよ」


 騎士ジョイスが、俺に声をかけてきた。


「ジョイス。どうした?」

「さっきまで、悪かった」

「何がだ?」

「お前を信用していなかった」

「そんなことか」


 俺は、大して気にもとめない。


「どうしてだ? 私は、お前に否定的だったのに」

「誰だって、よく知りもしないヤツといきなり仲良くなりなさいなんて言われたら、戸惑うだろ? 同じだって。だから気にしない」


 ジョイスの気持ちもわかるんだ。

 苦手な相手との交流って、俺も昔からムリに近かった。

 そこまでコミュ力が高いわけじゃない。

 こんな体になってしまったからこそ、「嫌われて当然」と思って接しているに過ぎなかった。


「しかし、私の気がすまない」

「そっか……じゃあ、お前も泊まったら?」

「私も、ドワーフの街に?」

「ああ。いいだろ?」


 俺が尋ねると、ドルルがサムズアップで返す。


「というわけだ。機会があれば、ゆっくり話そう」

「そう、だな」


 ようやくジョイスが、柔らかい表情になる。


(第二章 完)

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