第19話 ダイデンドー 対 ドライディノス

 やっぱり、ドライディノスは強い。押されている。


「この!」


 剣を受け流し、ツバ迫り合いから逃れた。


「チェーン・ナックル!」


 正攻法が通じないなら、からめ手で決めてやる。


 縦横無尽に、チェーン・ナックルを見舞った。


「笑止!」


 こちらがどこを攻めても、メレディスは剣で弾き飛ばす。


「相手の武器は、剣だけか。男らしい機体だ」


 こちらは武装マシマシ。


 なのに、まったく勝てるビジョンが見えない。


「なぜ本気を出さぬ?」


 剣を構えながら、メレディスが問いかけてくる。


「うーん、なんかな。戦いづらい」

「手加減など不要だ! 堂々と戦うがいい!」


 煮え切らない俺に対し、メレディスはやる気だ。 


「くっそ、舐めプで倒せるやつじゃない!」

[約二一%ほど、全てにおいて相手の力量が上です]


 まともに戦うと、こちらが辛いってか。


[ただ、それはこちらが全力を出していない状態だからです。今のあなたからは、迷いが見受けられます]


 トリセツさんに、全部見透かされている。


[本気でメレディス将軍を殺す気持ちがあれば、たやすく仕留められるでしょう。ですが、それができない事情があるのでしょう]


 俺とトリセツさんの会話は、リオ姫には聞こえていない。

 だが、ハンドレオンには知られてしまう。

 どうせハンドレオンは、俺の心境なんて見透かしているのだろうが。


「ハンドレオンだけに問う。俺は、どうすればいい?」


 心の中で、ハンドレオンに語りかけた。


『メレディス将軍は、正々堂々とした戦いを好む武人です。手加減はむしろ、相手を侮辱する行為だと思いますよ』


 なるほど。「戦いを通してしか、理解し合えない」って展開なのかもな。


『それに、ヘタに加減して被害が増大するくらいなら、徹底的に小突いて追い払うほうがいいかもと』


 このライオンの思考は、案外好戦的だ。


「よっしゃ。吹っ切れたぜ! 話し合いなんて抜きだ」


 全力全開でいく!


電神剣でんじんけん、出力全部解放!」


 胸部のハンドレオンに、剣をくわえさせた。


 エネルギーのこもった光の粒子が、剣に行き渡る。


「うお……」


 さしものドライディノスも、後退した。


「どうしても退いてくれないのなら、俺の最大奥義を撃ち込んでやる!」

「その言葉見事ぉ! ならば、我が全力の太刀、受けてみよおお!」


 相手も本気になる。

 こちらとは逆に、漆黒の波動がドライディノスの持つ刃を包む。


破邪はじゃ雷閃らいせん!」


 真一文字に、俺はドライディノスへ斬りかかった。


濁流だくりゅうの太刀ぃ!」


 対するドライディノスは、横一文字に闇の波動を繰り出す。


 互いの必殺技が、衝突した。


「ぜああああああっ!」

「どおおおおぉ!」


 俺たちは、互いに一歩も譲らない。


 周りも、俺たちに手が出せなかった。

 血の気の多いドワーフ幼女でさえ、俺には近づかない。


「ちいいいい!」

「ここまでか!」


 くすぶっていた互いのパワーが、大爆発を起こす。


 その余剰エネルギーに耐えきれず、多くのマシンが損害を被る。


 魔物も人間側も、お構いなしだ。


 俺は、後ろへ大きくふっとばされた。


 姫は無事であるが、消耗が激しい。

 いつ合体が解けてもおかしくなかった。


 ドライディノスも、同様である。


 二度目のない、全力の攻撃を出した。

 にもかかわらず、どちらも倒れていない。

 これだけのパワーを持ってしても、相打ちとは。


 だが、メレディスはあきらめていない。

 剣を構え、こちらに切っ先を向ける。


「もうよせ、メレディス! このままだと殺し合いになる!」

「勝負はついていない! キサマの首を取らずに帰れるものか!」


 俺が停戦を要求しても、メレディスは退こうとしなかった。


 やるしか、ないのか……。 


「なーにを手こずっているのかなぁ!」


 間の抜けた声が、上空から聞こえてくる。


 かとおもえば、空が円形に暗くなった。


 空を見上げると、巨大円盤が浮かんでいるではないか。増援か?

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