第16話 ヒナトの秘策

「うわ、こんなヤバい兵器が俺に実装されていたのか……」


 よくできたものだ。

 どおりで、ナックルチェーンに影響が出ていないわけである。


「今のミサイルだが、ダイデンドーで撃っていたらどうなっていた?」

[威力は変わりません。その代わり、制限により発射弾数が減ります]

「あ、セーフティか」

[はい。ダイデンドーの威力であのミサイルを全弾撃てば、世界が崩壊しかねませんので]


 だろうな。全武装フル解禁によって全力を出すのは、難しいようだ。


 だが、俺がミサイルにこだわった理由はそこじゃない。


「くそ、煙で戦況が見えん!」


 そうだ。俺の目的は、相手の目を潰すこと。


 半分のミサイルで、わざと足元で爆発させ、煙幕を張る。


 もう半分の本命ミサイルで、天上の兵器を全て叩き落とした。


 こうなると、何が起きるか?


「ええい、残骸が!」


 奴らは、自分たちの兵器に押しつぶされるのだ。


「あぎゃああ!」

「ひいいい!」


 魔物たちの連携が、空から降ってくる味方の残骸によって総崩れとなる。


「リオやジョイスには、影響は?」

[なんの影響もありません。唖然としているだけです]


 まあ、そうなるよな。


[ミサイルの残弾数、ゼロ]


 ようやく、ミサイルの発射が止まる。

 次の発射に向けて、クールダウンが始まった。 


「自分で制御できないって、ヤバいな」

[まだ、コントロール系統が発達していません。さらなるスキル振りが必要です]


 制御系も大事だというわけか。


 まだ、知恵が足りない。

「ミサイル全部撃て」と指示を出したはいいが、ガチで全弾を撃ち込むとは。

 この世界の理屈を、理解していなかった。大きなミスだ。


[敵撃滅によって、レベルアップしました。制御系へスキル振りをなさいますか?]

「じゃあ、ミサイルをコントロールできるようにしてくれ」

[了解。任意でミサイルを放てます]


 とにかく、上空の敵は壊滅させた。


「ばかな!? 三分の一の戦力が消滅しただと!?」


 サイボーグ将軍が焦っている。


「だが、ヤツとて無事では済むまい! まずは機械人からだ! かかれ!」


 将軍が号令をかけると、魔物たちが襲ってきた。


「望むところだ。ナックル・チェーン!」


 鎖付きの上腕を放ち、手頃な敵を掴む。


「おおおおおお!」


 チェーンで敵の身体を引っ張り、ジャイアント・スイングをかました。


 武器代わりに機械兵をぶん回して、周囲の敵どもを蹴散らす。


 その勢いのまま、密集している敵軍団に掴んでいた魔物を放り込んだ。


 凄まじい音を立て、魔物たちが押しつぶされる。


 とはいえ、一人で戦うには限界があるな。


「すまんがリオ、戦闘員の誘導を頼む! 残骸に巻き込まれないように、退避させるんだ!」

「……は、承知!」


 我に返ったリオが、地上の敵に専念する。

 俺が開けた道を縫って、真っ先にドワーフの救助へ向かっていった。

 ハンドレオンが目を点滅させて、戦闘車両を誘導している。

 ちゃんと、俺が壊したメカの残骸をすりぬけて。


 シャドウ号に乗りながら、ジョイスはライフルで魔物を射撃している。

 重火器が武器なのか。


 俺が作った煙幕でうまく身を隠しながら、残存した戦力を削いでいく。


『援護が間に合いました!』


 ようやく、DDDの援軍が来た。


 山道での挙動がウソのように、高速戦闘をこなす。

 ジェットを搭載していると聞いたが、やるじゃないか。

 俺が張った煙幕をジョイスがうまく利用して、ウォーカー部隊が敵を蹴散らす。


 ここまでは、俺が発案したんじゃない。

 リオノーラがどうやって短時間で撤退・進撃・防衛をこなすか。

 俺がリオの視線を追って、分析した結果だ。


「作戦は大成功です」

「ああ。騎士たちの援軍もありがたい」


 リオのおかげで、戦局を有利に進められている。

 騎士たちも想像以上の活躍を見せていた。


 これで、奴さんに集中できる。


 あのサイボーグに。

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