第15話 全ミサイル、撃ち尽くせ!

「なにかあったのか、ジョイス?」

「……別に」


 俺が問いかけると、含みのある言い方でジョイスは首を振る。


「まあいい。とにかく俺が先行して、正面突破で数を減らす。二人には両脇から攻めてもらうか、戦闘員の避難を頼みたい」

「私に命令するな! 私に指示を出せるのは姫だけだ!」


 ジョイスが、俺をキッと睨む。


「そう怒るなよ。リオ姫の目線を追って、代弁しただけだ」

「なに?」


 俺の意見を受けて、ジョイスがリオの顔を見た。


「ありがとうございます、ヒナト様。あとは、ジョイスに詳細を伝えようとしていたところでした」


 リオも戦闘慣れしているのか、どこから攻めたら確実かを確認している様子である。さすが国を背負うだけあって、風格があった。


『こりゃ、一本取られたな』

「う、うるさいっ」


 シャドウ号に茶化されて、ジョイスがふてくされる。


「ヒナト様、合体はしなくてよろしくて?」

「数は多いが、前のような奴らがいない」


 サイクロプス級がいれば合体も考えたが、この状態でどれだけできるかわからない。

 ザコにも通用するのか、試す必要がある。

 燃費などの考慮も必要だ。


「合体して意気込んで襲撃したら、秒でガス欠になりました」では、目も当てられない。

「かく乱するだけなら、数で攻めたほうがいいだろう。いきなりダイデンドーがドーン現れたら、向こうも戦力を増やす可能性がある」


 ダイデンドーの稼働時間は、相当に短かった。


 ボククラスを相手にするか、短期決戦向けだ。


「そうですね。前回のことがあるやも」

「だが、どのみちダイデンドーは必要だ。合体しなくてはいけない状況になったら、そのときは頼む」

「承知しました。お気をつけて」


 サイドからジョイスとシャドウ号が攻め込んで、スキを突いたリオが救助へ向かう。

 あとはこちらの増援を待つことにした。


「任せたぞ! と、さて」


 今までの会話は、あくまでも建前である!


「トリセツさん、準備はいいか?」

[良好です【マジック・ミサイル】、いつでも発射可能です] 


 実は試したい武器があって、二人から距離を取りたかっただけなのだーっ!


 ああ、ミサイル。なんという背徳的な響きか! 


 昨日の夜、俺にミサイル発射機能が実装されたと聞いて、早く試したいと思っていた。


 空からの敵もいるから、撃墜にはちょうどいい。


 ドワーフの国は劣勢のようだ。反撃と行きますか。


 ただ、二人に被害が及ぶとヤバい。よって、距離をおいてもらったのである。


 超小型ミサイルハッチが開く。

 各ハッチが、腕や足、指や背中など無数に出現する。

 ナックル・チェーンの周りにも。


[ミサイルの上限は、一度に二万発です。あとは、自力でなんとか耐えてください]

「わかった! 全てのミサイル照準!」


 崖を降りつつ、照準を合わせる。


「行くぜ、おおお!」


 元の大きさに戻り、俺の方に敵の注意を向けさせた。


「俺はココだぜ、敵さんこちら!」


 敵が俺に気づく。しかし、もう遅い。


[撃てます]

「よし行くぜえええええ!」


 俺は、顔の前で腕を交差させた。


 白いミサイルが、ハッチから放たれる。

 形状は、ミサイルというより矢に近い。

 ボールペン、と形容したほうがいいかも。


 それでも、着弾すると凄まじかった。鋼鉄のザコたちを粉砕していく。


 いきなりの襲撃で、敵の魔物たちが慌てふためいた。

 しかし、空から降ってきた魔物の残骸に押しつぶされる。


 ミサイルの一発一発が、とんでもない火力で魔物たちを焼き尽くす。

 一瞬で、戦場の一部が焦土となった。


「よく味方を巻き込まないな」

「敵味方識別機能は、搭載しています」

「しかし、爆風には巻き込まれるんだな……」


 魔物と同様、味方も爆風や衝撃波にブッとばされていた。


 だが、発射はまだ終わらない。

「全部撃て」と言ってしまったばかりに、ガチで二万発打つつもりである。

 無茶は言うもんじゃないね。

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