第14話 魔王軍襲来

 外へ出ると、騎士たちが武装して、外へ駆け出している。


「なんだなんだ?」

『例のドワーフの基地で、魔王軍が進軍してるってよ!』


 ひどく慌てた様子で、シャドウ号が教えてくれた。

 敵襲か。こっちも急がねば。


「おはようございます、勇者ヒナト様。さっそくなのですが」

「話は聞いた。ドワーフの基地まで案内してくれるか?」

「はい!」


 リオの先導で、俺も現場へと向かう。


 騎士たち全員が、二足歩行の機動マシンに乗り込んでいた。

 大きさは、バイクくらいか。

 車両を扱う者たちまでいる。

 聖獣とは、また違うな。


「あれはなんだ?」

『メタル・ウォーカーという、歩行戦車です。馬では休憩も必要ですし、弾に当たると死ぬので、騎士たちはああいう攻防一体のマシンに乗り込んでいます』


 ハンドレオンが、説明してくれる。


 車両と別方向で向かうのは、兵を分散しないと一点の道に狙い撃ちされるためらしい。


「王は馬に乗っていたが?」

『国王のお馬は、国王の発するバリアに守られていますので』


 そんな芸当ができない騎士たちは、あのマシンを操っているわけか。


「とはいえ。ウォーカーは足が遅いな」


 俺たちは、どんどんウォーカーたちを引き離す。


 険しい山道を動くには、ウォーカーは最適だ。

 が、高速移動だと俺たちに分がある。


「エンジンが使えませんからね。山を抜けて背部ジェット機能が使えたら、我々よりは動きます」


 走りながらの移動は、想像以上に大変だ。

 息切れなどは起きないが、険しい山道を登るのは骨が折れる。

 DDDが山奥にあるため、その過酷さは倍増していた。


「空を飛ぶ能力を、もらっておくんだったな」


 それでも、一時間で目的地にたどり着く。


 到着したのは、俺とリオの他には、ジョイスとシャドウ号だけである。


 他の騎士たちは、まだ数時間はかかるらしい。


「移動車両があるのに、時間がかかるんだな」

『我々聖獣と一般的なマシンでは、構造からして違いますので』


 敵との戦力差は、相当に大きいようだ。


 崖の上から、辺りの様子を伺う。


 魔王軍が、目に見えて大量にいた。


 スチームパンク風の都市に向かっている。


 街の煙突からは、大量の蒸気が噴き出ていた。


「すごい数だな」


 都市の手前にいるのが、ドワーフ軍だろう。

 ヒゲをはやした小柄のマッチョが、剣や盾で武装し、機械軍団と戦っている。

 戦車や武装車両などの姿も見えた。


「やっちまえー」


 屋根のない車両の上から、一人の女ドワーフがロケットランチャーをぶっ放す。

 車体の揺れに合わせて、幼い体型に似合わない爆乳がブルンブルンと跳ねた。


 ロケットが、機械兵に命中して炸裂する。


 派手な爆発音と共に、機械兵が倒れた。


 身体が揺さぶられているのに、よくやるもんだ。


「よし。まずは一体」


 さらに、女ドワーフはロケットを打つ。


 敵勢力の一部が、跡形もなく吹っ飛んだ。ドワーフ特製なのかもしれない。


 一方、魔王軍の戦力はその三倍くらいだろう。


「うわー」


 大型のロボット兵団に、ロケラン車両が蹴り飛ばされてしまった。


 激しく横転したが、女性ドワーフは無事のようである。


 とはいえ、多勢に無勢だ。このままでは全滅してしまうだろう。


「死人が出ていないのが奇跡だ」

「基本的に、魔王軍は殺害を率先していません。目的は、あくまでも支配なのです」


 魔物たちはどうかは知らないが、魔王の目的は人類をドレイにすることらしい。


「本格的に、落としにかかっています……あれは!」


 魔王軍の中央を見つめ、リオが驚愕する。


 そこにいたのは、人間だった。

 黒い機械式のバトルスーツに身を固め、顔はカブトに覆われて見えない。


 いつぞやのドラゴンとは、違うようだが。


「メレディス将軍!? あんなところに!?」

「何者だ?」

「人でありながら、魔王ディーノの右腕として働いている、サイボーグです。その正体は、誰も知りません。しかし、人間とは思えない強さを誇っています」


 リオが、険しい顔で崖の下を眺める。


 一方、ジョイスはなぜか苦々しい顔をしていた。

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