第二章 俺が勝利の鍵だ!

第9話 特務機関 DDD《トリプル・ディー》

 俺はハンドレオンと一緒に、街中のガレキを片付けつつ、災害救助に当たる。


 リオノーラ姫は、負傷した人々を治療をしていた。

 額に、汗が滲んでいる。


「よし」


 街のガレキを処理し終えて、俺は背伸びをする。


「ありがとうございます、勇者ヒナトさま。我が秘密基地でお休みくださいませ」

「感謝する」


 姫が俺をアジトまで案内してくれるとのこと。


「ありがとー」

「勇者さま、ありがとう!」


 街の人々が、俺に感謝しながら見送ってくれる。


「こいつを持って帰ってくれ! うめえぞ!」


 大量の魚が乗った荷台を、引っ張ってきてくれた。


「ありがとう。いただくよ!」と、俺は荷台を担ぐ。


「みなさん、完全にお守りできなくて申し訳ありません」

「いいってことよ! 勇者もいるんだ! オレたちだって!」


 街の人々が、姫を励ました。


「ありがとうございます。これからも、我がデッカー王家をよろしくお願いします!」


 姫に感謝しながら、街の人は手を振って俺たちを見送る。


「これから、どこへ行くんだ?」

「山の奥深くです」


 ハンドレオンに乗った姫の後に、俺はついていく。


 空からの襲撃は、ないみたいだな。


「おっ、なんだか粘り気のあるフィールドがあるな」


 肉眼ではわからないが、目に魔力を込めると特殊なフィールドが半球状に広がっていた。


「おわかりになりますか? これが、我がデッカー王朝が襲撃を受けない理由でございます」


 デッカーの魔術師が、フィールド生成装置を作り上げたのだという。


「うわ、見るからに秘密基地だな」


 俺を待ち受けていたのは、石とレンガ作りのファンタジー的な城ではない。まさしく、鉄と電気によって作られた基地だった。


 ウイーンと、森の一角が四角形に切れる。


「うわ、なんだ?」


 ガクン、と足元が下がっていく。基地に入るのではないらしい。


「ようこそ、特務機関 DDDトリプル・ディーへ」


 俺を見上げながら、リオノーラ姫が告げた。


「トリプルディーってのは?」

「D:ディナスティ D:デッカーズ D:ドック。略して、トリプル・ディーです」

『デッカー王家の埠頭』、ね。


 たしかに、基地は海沿いにある。高い山に囲まれて、見えないが。


「ここは、リポスの街を拠点としています」

「あの街は、リポスと言うのだな」


 おお、森の地下も金属質ばかりだ。秘密基地と言う割に、がらんどうだが。


「こちらが、DDDの内部です」

「なんだか、九〇年代のアニメ世界だな」


 ここまで機械文明とファンタジーの融合って、めったに見なくなったな。

 あるにはあるんだろうが、どちらかの色が強まっている。

 調和より、主張し合っている感じだな。


 その点、この区画は機械が侵食しているように、ファンタジー世界に溶け込んでいた。


「おかえりなさいませ、姫様」


 魔法使い風の老人が、俺と姫のもとにかけつけた。

 杖は樫の木で作っているようだが、手に持っているのは、タブレットのような?


「じいや! ただいま戻りました!」

「……ややっ! こちらの方が!」


 俺を見て、じいやと呼ばれた魔道士が目をカッと見開く。


「はい。勇者ヒナトさまです。またの名を、ダイデンドーさま!」

「ダイデンドー殿。ウワサは真実だったのですね?」


 手をワナワナとさせながら、老人が杖を落とす。


「ええ。『世界に機動の悪魔が舞い降りし時、闇を斬り裂く機械の巨人現れん。その名をダイデンドー』。伝説は、今ココに!」


 興奮気味に、リオノーラ姫とじいさまが語り合う。


 そんなに大それた伝説だったのか。


「こちらは大魔道士のサティ。わたくしは、じいやと呼んでいます」

「サティですじゃ。よろしく頼みます勇者殿」


 老魔法使いサティが、フードを取った。耳が尖っている。


「あんた、ひょっとしてエルフでは?」

「ひょっとせんでも、エルフですじゃ」


 フォフォ、と、サティ爺はうれしそうに笑う。

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