第8話 勇者パースで、トドメの一撃

『けえい!』


 今度は、目から火を放った。

 その火力も、先程とは段違いである。

 ノーマル状態の魔力障壁では、破壊されていただろう。

 しかし、障壁を使うまでもない。拳だけで、俺は魔弾を打ち返す。


『ぬごおおおおお!?』


 攻撃を反射され、サイクロプスが大きくダメージを受けた。


『な、なんというパワーだ!?』

『やはり、恐れていたことが現実となった! ダイデンドーは、悪魔だ! 人間なんぞの手に余る代物! やはり、我々モンストレムが奪い、制御せねば!』

「悪魔はどっちだ。なんの罪もない人々を苦しめ、街を破壊するとは!」

『やかましい! 人類を支配下に置くのは、我らモンストレムだ!』

「なんだと。許さん!」


 俺は、腰の部分にある鞘を展開する。


 刃のない柄が、鞘から飛び出す。


電神剣でんじんけん!」


 降りてきた柄を手に取った。


 ズン、という音とともに、白銀のロングソードが柄から突き出る。


 剣を獅子の口に近づけ、なめさせた。

 刃を滑らせると、刀身が炎に包まれる。


 相手に対し身体を横に向けて、足を大きく開き剣を構えた。



 これぞ、「勇者パース」だ!



『なんのお!』


 サイクロプスの目が、ありえないほどに巨大化する。

 すべてのエネルギーを、一つ目に込めたらしい。

 この街を吹っ飛ばせるほどのパワーを収束させていた。


 撃たれる前に、仕留めてやる。


「電神剣、破邪の雷閃!」


 剣を振りかぶり、サイクロプスに斬りかかった。


『甘いわぁ!』


 カウンターで、サイクロプスは目から光線を放つ。


 最初から相打ち狙いだったか。しかし、俺は敵を閃光ごと斬り裂く!


『のおおおおお! 目が、目があああああ!?』


 俺の剣は、敵を真っ二つにした。


「地獄の一丁目へは、一人で行くんだな!」


 剣を鞘に収める。


 サイクロプスが、俺の背後で爆砕した。


 火の手が街に及ばぬよう、風の魔法で衝撃波を制御する。


 爆炎が巻き上がった。悪を浄化するかのように。


[敵影なし。戦闘モードを解除します]


 俺の身体から、ハンドレオンが分離した。元のメカライオンに戻る。


「勇者さま!」


 リオノーラ姫も光の球体に包まれながら、俺から降りた。


 避難民たちが、姫を慕って集まってくる。

 しかし、俺の巨体を前にして、近づいていいかわからない様子だ。


「あのロボットはいったい?」

「本当に敵ではないのか?」


 まだ、誤解は解けていない模様である。


[ご説明していませんでしたが、あなたの姿は、あなたには『ちびっこ向け、ヒーローロボット然とした姿』に写っています。しかし、姫を含めて周りには、『成人中年男性向け、禍々しい甲冑を身にまとうクリーチャー』のようなマシンに見えているのです]


 なるほど、そりゃあビビるわな。

 媒体ごとにビジュアルが違うロボの造形と同じ、ってわけか。


「ボクを助けてくれたよ!」


 さっき助けた少年が、俺をかばってくれた。


 しかし、誰しもが半信半疑の状態である。


 姫に、俺はひざまずく。


「お顔をお上げください。勇者ヒナトさま」

「そうはいかない」


 本当なら、姫は俺に従うとか言い出すだろう。


 しかし、今は人前だ。避難民は、俺が危険だと思っているはず。


「リオノーラ姫、俺はあんたの指示で動く。問題ないな」


 姫が俺を抑え込んでいる。そう、思わせておいたがいい。


「……え、ええ。はい」


 とまどいつつも、姫は了承した。


 俺は、ガレキを処理しにかかる。


「いかがいたしましたか?」


 姫が疑問を俺に投げかけた。


「街がひどい有様だ。片付ける」


 人の手で動かすより、俺が動いたほうが早く済む。


「……お願いできますか?」

「お安い御用だ」


 ひとまず俺は、街を修復することに。


 俺に賛同して、街の人々も動き出した。


 これで、街に信頼を得られるかどうかはわからない。

 しかし、打算はなかった。身体が勝手に動いたのである。


 ただ悪を斬り裂くだけのロボになんて、俺はなりたくない。


 誰かを助けられる存在でいたいんだ。

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