第7話 ダイデンドーの真の力
「これが、勇者ヒナトさまの真なる姿。なんと雄々しい」
リオノーラ姫の座る席は、真っ白い半円状のテーブルだ。
お茶会でも開けそうな優雅さである。
手持ち無沙汰なのか、姫はなんかソワソワしていた。
「これが、勇者様の内部……わたくしが、パイロットだなんて」
おっかなびっくりな様子で、姫がコンソールをなでる。
レバーやボタンなどの装置はない。
[操縦席と言っても、パイロットは基本的にダイデンドーの魔力を増幅させる【リアクター】の役割です。リオノーラ姫に支障は出ません]
また内装は、パイロットのイメージで変わるそうだ。
他のパイロットが乗った場合、また形状が変わるという。
俺が乗ることになっていたら、レバーとかボタン付きコンソールだったんだろうな。
触ってみたい気もするが、なによりロボになれたことのほうがうれしい!
『おのれ。なぜ胸の装甲などに、獅子の顔がある!?』
「それはな……カッコいいからだ!」
俺の回答に、サイクロプスが唖然とする。
それにしても、力がみなぎっていた。
どんな相手でも、倒せる気がする。
「よし、いけそうだ!」
『なにをぉ? 小せえままじゃねえか!』
「『カボチャに目鼻』なお前に言われたくないね!」
『んだと? この二枚目に向かって。くらえ!』
またしても、鉄球が飛んできた。
「ナックル・チェーン!」
俺は肘から先を飛ばし、対抗する。
鉄球が、あっけなく砕け散った。
『なんと、バカなぁ!?』
ナックルは鉄球どころか、サイクロプスの腕さえ粉砕する。
その勢いで、サイクロプスは尻餅をつく。
[右腕出力……二二〇%? 引き出せます]
なんで疑問形?
しかも一〇〇%を軽く超えてません?
倍近くになってまっせ?
[予想外です。これだけの戦闘データは、これまで確認できませんでした]
そうなのか。まあいい。今は戦闘に集中しよう。
サイクロプスへ向かって、突進した。
『バカめ! いくらオレサマが片腕を失ったとはいえ、力比べを挑むなど!』
こちらを見下しながら、サイクロプスが迎え撃つ。
「ブレイズ・キック!」
相手を避難民から遠ざけるため、炎をまとったキックで蹴り上げた。
インパクトの瞬間、ブーストを全開にする。
『ぬごおお!』
盛大に、サイクロプスの巨体が吹っ飛んだ。
はるか遠くの地面に墜落する。
自分より小さい相手に跳ね飛ばされるなんて思わなかったのだろう。
対処できないでいる。
[脚部出力、三〇〇%上昇。やはりです。これまでとダイデンドーの出力が段違いです]
なんでまた。
「原因はわかるか?」
[おそらく、パイロットを用いなかったためでしょう]
俺の動きやロボの知識が、ダイデンドーに直接シンクロしている可能性があるという。
[ダイデンドーは元々、パイロットのポテンシャルや知識を参考に、パワーアップします。あなたの場合は、それがダイレクトに反映しています」
魂が固定されたって言っていたしな。
「つまり、俺のロボ知識をロボが吸収して、分析。自身を強化したから、ありえない攻撃力を得た、と」
[おそらくは]
システムボイスさんでも、想定外なことだったらしい。
[あなたのようなケースは、初めてでした。イレギュラーが発生しています。ここまでくると、システム係としても予想できません]
俺に、そんな力があったとは。何が役に立つか、わからんな。
「そうだ! 姫、結構揺れるが大丈夫か?」
振動まで、頭が回っていなかった。悪いことをしたのでは?
「大丈夫です! まったく揺れを感じません!」
「そうか、よかった」
「お気遣い感謝いたします」
システムボイスによると、姫は俺と一体化しているも同然なのだそうだ。
俺の行動はすべて見えているが、揺れもダメージも通らないという。
自分でも、信じられない。こんな力があったとは。
かつての英雄が、このロボットを封印するわけだぜ。
もし、こんなパワーを悪用されたら。
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