第6話 合体、ダイデンドーッ!

 ネコは水を嫌う。

 雨の中でボンネットに寝転がるネコはいない。車の下に隠れるはずだ。


 さっきしぶきから逃げていったネコを見て、俺はハンドレオンとの会話を思い出したのである。


「おおかた、ネコを救うために力を使って、俺と会ったときには力がなくなっていたんだろ?」


 とっさのことだったのだろう。

 ネコをボンネットに寝かせたまではよかった。

 が、そこからハンドレオンは力をほとんど使い果たし、ネコの行方がわからなくなった。

 内容の矛盾はここから発生したんだ。


『……申し訳ありません』

「姫様の指示だろ?」


 ハンドレオンと共に、リオノーラ姫もうなずいた。


「リオノーラ姫、ネコを助けてくれてありがとう」


 俺は、感謝を述べる。


「それは、どういう意味でしょう?」


 叱責されると思っていたのか、姫様は驚いていた。


「ネコを見殺しにするような人だったら、俺はあんたに協力しなかった」


 姫様が心優しい人間だと思ったから、そんな姫に仕えるハンドレオンと共に戦いたいと思えたのだ。


「そんなリオノーラ姫を、ハンドレオンを、俺は信じる!」

「勇者さま……」

「心優しい姫に見守られているなら、俺だって道を踏み外さない。ロボ愛が強すぎて、暴走することもないだろう。まあ、保証はできないけどな!」


 俺がサムズアップすると、姫はクスリと笑った。

 緊張がほぐれたようだ。


『オレサマの目が黒いうちは、合体などさせるものか!』


 とうとう、サイクロプスの鉄球が俺の障壁を破った。


 避難民が悲鳴を上げる。


「させるかあ!」


 俺は、鉄球を身体で受け止めた。押しつぶされそうになる。

 しかし、手は放さない。絶対に。


「姫、ハンドレオン! 俺に力を貸してくれ!」


 俺の呼びかけに、ハンドレオンがうなずく。


『あなたこそ、まことの勇者です!』


 ハンドレオンの身体が、光を放った。


『ぐおお! なんという忌々しい光ぃ!?』 


 あまりの眩しさに、サイクロプスが怯えている。

 目を押さえ、鉄球を緩めた。


 これで自由になったぞ。


[合体シーケンス、始動。いつでもご命令を]


 システムボイスから、合図が。



 よし、合体だ!


 

「チェンジ。ダイ、デン、ドーッ!」



 俺は、ハンドレオンとともにジャンプした。


 腕を広げ、宙を舞う。

 おっ、空中で体勢が固定されたぞ。

 身体から電流が放出され、ハンドレオンと稲妻でつながる。


 ハンドレオンがしゃがむ姿勢を取った。

 身体を折りたたんでいるらしい。

 前足と後ろ足が、分離した。


 おっ、おっ? 俺の胸がグワーンと音を立てて開いたぞ。


 両腕にハンドレオンの前足が追加装甲として装着された。


 続いて、足元にレオンの後ろ足がドッキングする。


 顔の部分が、俺の胸に収まった。続いて、顔が雄叫びを上げる!


 ん? ハンドレオンの口が、光を放ったぞ。


「え、えっ!?」


 今度は、リオノーラ姫様が浮かび上がったぞ!

 ハンドレオンの顔に吸い込まれていっている。


 大きく口を開けて、ハンドレオンが姫をゆっくりと口へと運ぶ。


 なるほど、ハンドレオンの放出している光は、トラクタービームか?


 しかも姫様のドレスが、足から頭の順でパイロットスーツに変わっていく。

 全身が純白で、黄色いラインが走っている。

 しかも宇宙服みたいなダボダボではなく、ピッチリ光沢のある繊維だ。 

 バレリーナのレオタードみたいだな。

 背中に大きな、蝶の羽まで生えているではないか。


 姫様が、俺の中に乗り込んだのがわかる。

 コクピットに着席すると、俺の胸も暖かくなってきた。

 姫の優しさが、俺にまで流れ込んでくる。


 ああ、力がみなぎってきた!


 仕上げはやっぱり、これでしょう!



「幻想機神!」



 俺は、両腕をクロスさせた。目一杯、力を溜め込む。



「ダァイ! デェン! ドォオオオオオオオオオ!」



 で、右腕を振り上げる!



 決まった……。


 ロボットモノの醍醐味といえば、合体・変形後に見得を切るシーンでしょ!

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