第5話 俺があんたに手を貸す理由
ダイデンドーは昔、相当強いパワーを有していた。
そのため、自らの力のせいで世界を破壊しかねない。
使い手次第では、神にも悪魔にもなる。
そのため、世界征服を企むモンストレムに狙われた。
パイロットが乗って、ハンドレオンと合体して、ようやく真の力を発揮するそうだ。
なのでダイデンドーは自身で制御をかけ、力を分散したのである。
「ダイデンドーとモンストレムとの関係は?」
[モンストレムは過去に一度、ダイデンドーによって滅ぼされています」
しかし、長い年月をかけて魔王がまた復活を遂げたそうな。
「ハンドレオンと合体すれば、俺はもっと強くなるんだな?」
[そうです。しかしそのためには、強い信頼が必要です]
ハンドレオンはまだ、俺の力を信じきれていない。
どちらかというと、俺を死なせた負い目の方が強いのだとか。
気にしなくていいのに!
ゴロゴロと、暗雲が立ち込めた。
いや、【闇】そのものが空を覆っている。
陸地は晴れているのに、海だけ暗くなった。
限定的に発生した闇が渦を巻き、二足歩行の龍が現れる。
闇よりもはるかに黒かった。
「全力が出せないのに、新手かよ!」
俺は身構える。
だが、黒いドラゴンはこちらに視線を向けない。
サイクロプスをにらみつけていた。
「何をしているかと思えば。たった一人の小娘でさえ、始末できぬとは」
女性っぽい声で、ドラゴンがサイクロプスを叱責する。
ボイスチェンジャーで、無理やり男性を演じているような声だ。
「わが魔王の力を分け与える。存分な働きをせよ!」
ドラゴンの頭から生えている二本の角が、稲光を放つ。
黒い雷光をドラゴンは発射し、サイクロプスに浴びせた。
『ごおおおおお!』
サイクロプスが、悶絶する。
ただでさえずんぐりむっくりだった巨体はさらに肥大化し、片手が棍棒と融合して鉄球となる。
先に敵がパワーアップしやがったぞ!
敵が、俺の倍近く身体が大きくなった。
「サイクロプスよ、魔王に貢献せよ!」
女声のドラゴンが、闇へと溶け込む。
空がまた、青さを取り戻した。
ヤツは何だ? 敵の幹部クラスだろうか?
自分は何もせずに帰っていったぞ。
だが、今は目の前にいるコイツだ。
『目にもの見せてやるぜえええええ!』
サイクロプスが、腕を振りかぶった。腕の鉄球を放ち、俺にぶつける。
「ごあああああ!」
今度は、俺がふっ飛ばされてしまった。
とてつもなく、重いパンチである。
「ダメージは、ないな!」
打撃を受けた場所を、触ってみた。今のところは、
無傷だ。ただしロボでも、痛みは感じる。
[特殊効果【鉄壁】の効果です。しかし、あまりダメージを受けすぎると、全壊してしまいますのでご注意を]
防御は意識しろ、ってことか。
再度、鉄球が飛んできた。
今度は姫様が狙いかよ!
「マジック・フィールド!」
手を突き出して、魔法の障壁を作り出す。
鉄球は弾かれた。
しかし、俺の踏ん張りもきかなかった。
勢いよく、吹っ飛ぶ。
姫に当たらないように受け身を取るのが、精一杯だった。
「大丈夫か!?」
「問題ありません。平気です!」
やや青ざめているが、無事らしい。
なおも、サイクロプスは俺を攻撃してくる。
フィールドを張って防ぐ。避難民がいる以上、回避はできない。
「姫よ、あんたの力がいる。手を貸してくれ!」
「わたくしの?」
「そうだ。合体する」
「が……!?」
姫が、頬を染めた。
「あのな、そういう意味じゃない。ハンドレオンと俺が合体することで、真の力が出せるそうなんだ」
『我にはムリです! あなたを追いかけるのが手一杯で』
ハンドレオンは、足がすくんでいた。
『強化された機獣なんて、相手にできませんよ』
まるでおとぎ話に出てくる、『勇気のないライオン』みたいだな。
「大丈夫だ。お前さんは、勇敢なライオンじゃないか」
『我が?』
「だって、地球でネコを助けただろ?」
『何をおっしゃって? ネコはボンネットの上に寝ていたと説明して――』
「雨が降っていたのにか?」
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