第4話 力不足!?

「すごい。これが、勇者様のお力」


 ハンドレオンに乗った状態のリオノーラ姫が、茫然となっていた。


 そんなにすごいんだな。


 リオノーラ姫やハンドレオンにも、小鬼が襲いかかった。

 俺を相手にするのが怖くなったようだな。

 手頃な相手から片付けようという算段か。


「レオン、ファイアーボール!」


 姫の号令で、ハンドレオンが口から炎の弾を吐く。


 一発で、ゴブリンが消滅した。

 ゴブリン程度なら、軽く倒せるみたいだな。


「すごいぞ姫!」

「いえ。我々の戦力では、こんな数のゴブリンの制圧だと軽く二時間はかかっていました。あなたはそれを一瞬で壊滅させています」


 それがどれだけ凄まじいことなのか、姫の解説でなんとなくわかった。


「姫も安全なところへ! 避難民を守ってくれ!」

「はい!」


 ハンドレオンを駆り、リオノーラ姫は避難所へ。


『ぬう、初めての戦闘とは思えぬな?』

「格闘技なら、多少は慣れている」


 実際、作業用二足歩行ロボで、殴る蹴るなどの動作もテストしていたからな。


『ザコは目じゃねえってか!』


 サイクロプス型メカが、オレに殴りかかってきた。


 こっちでも、俺はロボットって認識なんだな。

 というか、ロボットという概念はあるらしい。


「おっと!」


 相手のパンチを抱え込み、投げ飛ばす。


「のわあああ!?」


 もんどり打って、敵が壁を突き破る。外へ放り出された。


 しかし、ガレキが姫に降りかかりそうに。


「うお、大丈夫か?」


 俺は、手で姫をかばう。


「ありがとうございます。平気です!」

「ここは危険だ。離れていろ」


 リオノーラ姫はハンドレオンに乗って、その場から離れた。


『では、こちらはどうかな?』


 サイクロプスが、棍棒を手に取った。


 間合いを取って、有利に攻撃する気か。

 たしかに、ケンカだと棒を持った奴は強い。


 敵が棍棒を振り回す。


 動きがつかめず、回避一辺倒だ。


『グハハ! 逃げてばかりではオレサマは倒せぬぞ!』

「なんの!」


 俺はジャンプして、大きく後ろへ下がった。


『怖気づいたか?』

「そんなわけねえだろ! ナックル・チェーン!」


 ブッピガン! という金属音とともに、相手の胸部へパンチがヒットした。


 敵は棍棒を落とし、倒れ込む。


 腕を上げて、肘から先を引き戻した。


「このままいけるか?」


 いや。相手は大したダメージを負っていない。

 サイクロプスは、案外タフだった。


『くらえ!』


 倒れたままの状態から、サイクロプスが目から火の玉を吐き出す。


「うわっと!」


 またしても、俺は後退した。再度障壁を出しながら、後ろへ下がる。


 立ち上がりながら、サイクロプスはなおも攻撃の手を緩めない。


 俺は、海まで下がってしまう。


「うわああ!」


 沈み込みはしなかったが、俺は海で尻餅をついてしまった。


『トドメだ!』


 海の中へ向かって、火の玉が飛んでくる。


「うわっと!」


 俺は、足元にある噴射機能を使って、体制を立て直した。


「よしラッキー!」


 水柱が上がって、火の玉をかき消してくれる。


 海水のしぶきが押し寄せて、民家の屋根で寝ていたネコが飛び退いた。


 とはいえ、どうするか?

 なんだかこちらは、決め手に欠ける。

 初戦闘というだけが、理由ではないようだ。


「どうなっているんだ? 無敵のロボと言う割に、そこまでではないような……」

[解説します。幻想機神ダイデンドーは、まだ完全体ではありません。現状の出力は、最大値の三六パーセントを下回っています]


 なんだと!? それでも、相当に強いが。


[最大出力で戦うには、パーツが足りません]

「何が足りないってんだ?」

[機獣 ハンドレオンです]


 あのネコか。


 俺が真の力を発揮するには、ハンドレオンと合体する必要があると。


 ハンドレオンなら、リオノーラ姫を乗せて俺の戦場へ駆けつけている最中だ。


「なんでまた、そんな面倒な仕様に?」

[セーフティです]

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