第3話 初陣、ダイデンドーッ!

『おのれ、まさしくダイデンドー!? まさか、お前は封印されたはず! なぜ動ける!?』

「正義の力が、奇跡を呼んだのだ」


 敵に向けて、俺は指を二本立てる。


「俺はこの世で嫌いなものが二つある。本編とパッケージ解説でキャラの性格が合ってないエロゲーと、お前のような秒で退場するくせにイキって出張ってる小悪党だ!」

『小賢しいロボめ! 目障りだ!』


 サイクロプスが、突撃してきた。


「とう!」


 反撃に、俺はサイクロプスを投げ飛ばす。


「ぐへえ!?」


 高台から落下し、敵の巨体が海へと落ちた。


 追撃のために、俺も降りていく。


「むっ!」


 しかし、コイツの相手をしている場合じゃない事態が、外では発生していた。


「街が、燃えている!」


 短剣を持った小鬼型ロボット兵が、街や店を殴って破壊しているではないか。


[最下級のモンストレム兵、ゴブリンです]


 ブレスレットから聞こえてきた解説音が、再び俺の頭に語りかけてきた。


 小鬼といっても、二メートルくらいある。

 この世界では、あのサイズは小型なのだろう。

 ハンドレオンは五メートル近くあるし。


「くそ、街を襲うのはやめろ!」


 近くにいたゴブリン型ロボットを、崖へと投げつける。


 俺に気づいたゴブリン共が、ワラワラと襲いかかってきた。


[リオノーラ姫は今まで、ハンドレオンとともにこのようなロボ兵と戦ってきました。しかし、この数では]


 なるほど。では、やるか!


「てい!」


 力を込めて、ゴブリンたちの群れに殴りかかる。

 と、俺の拳から、旋風が巻き起こった。


「なんだ、この竜巻は!?」


 一発殴っただけで、五体もつられて吹っ飛んだぞ。


[標準技の、【サイクロン・パンチ】です。エネルギーを三、消費します]


 こういうゴブリンたちを倒すために、編み出された技らしい。


 襲われていた街の人々が、俺を見て身をすくめている。

 新手の魔物だと思われているのだろう。


「うお!?」


 背中めがけて、ゴブリンが切りかかってきた。

 俺が無傷だったために、怯んでいる。


「邪魔すんな!」


 裏拳で、ゴブリンの頭を破壊した。


 仲間をやられて、別のゴブリンたちが集まってくる。


「早く逃げろ! あっちに火の手は来ていない!」


 ゴブリンからの攻撃を防ぎつつ、避難民を促す。


 俺が味方だとわかって安心したのか、住民は指示通り大急ぎで逃げ出した。


 とはいえ、まだゴブリンの数は減っていない。


「お次は、キックだ!」

[足の裏がブースターになっております。起動させてみてください]

「住民に、危険はないな?」

[残存避難民、ゼロ。いけます]


 敵の集団に向けて、前蹴りを浴びせた。こちらは一〇体ほど蹴散らす。


 火柱が、小鬼ロボットたちを飲み込んだ。


[【ブレイズ・キック】です。エネルギーを五、消費します]


 ブースターを使う分、消費が激しいようである。 


「うおっと!」


 攻撃の気配を感じ取って、足の裏のブーストを起動させた。


 さっき俺がいた場所に、矢が突き刺さる。


 遠くから、弓を引き絞っている相手を見つけた。


「この武装を試すか」


 テレフォンパンチ気味に、腕を振りかぶる。


「ナックル・チェーン!」


 かけ声とともに、大きく腕を突き出す。


 ドウン! という炸裂音とともに、俺の肘から先が噴射した。

 飛んでいった拳と俺の腕とは、鎖で繋がっている。


 弓矢を構えていたロボットを、武装ごと叩き潰した。


 ジャララララ、と鈍い音を発しながら、飛んでいった上腕が俺の元へ戻る。

 再び、ドッキングした。


 しかし、倒した弓兵が集合住宅の壁を破壊してしまう。


 崩れた先には、逃げ遅れた子どもが。


「ナックル・チェーン!」


 両方の腕を、飛ばす。


 右手で子どもを抱えて、左手でガレキを受け止める。


「もう大丈夫だ」


 子どもを手に載せながら、避難民のところへ。

 親らしき人が前に現れたので、子どもを託す。


「よかったな。もう安心していいぞ!」


 俺は、戦場へ戻っていく。

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