第22話 心を知る
十二月三日、午前十一時五十分。
JR飛ヶ﨑駅は地域唯一と言って良い、都心部とをつなぐターミナルであるものの往来する人は休日だというのに見当たらず、ロータリーを挟んで向こうにあるショッピングモールすら外観からすでに寂れた雰囲気を漂わせていた。ターミナルと言っても、乗り換えを四、五回繰り返してようやく東京へと至るくらいであるから、われわれ住民にとって需要はまるでなく、かく言う私もこの地に引っ越してきて以来いちども訪れたことがなかった──今日までは。
家の近くの駅から路面電車を四駅乗って、着いた先に。
人の気配がないだけに目立つ、すらっとした女性の人影が、私が着く頃にはもう駅の入口に伸びていた。慌てて前髪を感覚で整え、ショルダーバッグの位置を確かめていると、
「茉希ちゃんおはよう!」
玲奈先輩は右手を振って私を呼んだ。
やばいな、十分前には着いておいて緊張を落ち着ける猶予をいただく予定だったのだが──できる社会人ともなると予定の十分前が定時で、さらに前に来るくらい当然なのか。
「おはようございます……もう昼ですし、こんにちは、ですか
ね」
「時間がどうだろうと自分が早いと思ったらおはようでいいんじゃない? 私だって仕事がない日に午前に起きたの久々だし」
「え、そ、そうなんですか?」
できる社会人ともなると平休関わらず七時には起きていてコーヒーを飲んでニュースを飲んでいるイメージだったが──気楽な話題がすぐにできたことにまずは安堵しつつ、私も午前起きは久しぶりです、と返そうとして先輩の顔を見上げると。
目を奪われてしまった。
普段のフォーマルな黒スーツからはかけ離れた、白地に黒い花柄のワンピースに薄桃色のカーディガンを羽織り、膝上から伸びた足はエナメルのフラットシューズを履いている。いつもどこか陰を湛えたような雰囲気の先輩が今日は、絵に描いたような上品な大人の女性の装いになっている。それでいて先輩らしい、何か難しい計算問題を脳内で解いている最中かのような理知的な表情は崩さずにおり──ああ、これは。
先輩に見惚れてしまって、何も言えなくなってしまったのは、
左手に潜んでいるあんたの所為ではきっとない。
「茉希ちゃんお腹すいた? 早速だけどランチ行こうか。私一応ここの地元民だから、変に堅すぎないいい感じの店知ってるのよね」
先輩がちゃんとおめかししているのに、いつの日かの出勤でも着たデニムシャツで済まてしまった自身を内心責めながら、駅を出てショッピングモールの脇路地へ歩み出した。
私の左斜め前を颯爽と良い姿勢で進む先輩の、背中を眺めながら──今の先輩は装いこそ休日だけど、完全に仕事の時のようないつもの「武装モード」だなと。内心に別の誰かを住まわせているかのように裏がありながら、乱麻のごとく台詞を完璧に読むいつもの玲奈先輩。そりゃそうだよね、こうやって二人きりで過ごそうというのもいつ以来かといった感じだし──彼女にとって今日は本質的には「仕事」と変わらないのだ。何かしら、休日を私に投資しないといけないという義務感の下、台本を事前に用意してきていて、そこにアドリブの余地はないのだ。だからと云ってどうこうとは思わない、私だってこの奥底に抱える緊張は、単に斜め前の先輩に対する好意からくるワクワクだけに由来するのではないから。何とかつつがなく今日を乗り切ろう、であるとか、左手のコレが暴れないように気を保とう──とか。
それゆえに。私が本当のところ、ささやかながら欲しくて焦がれていた台詞が発されることがなかったとして、それは致し方な
「あ」
急に先輩が立ち止まる。思わずぶつかりそうになる。少し天を仰いでから先輩は長い黒髪をたなびかせて、くるっとそのバツの悪い表情を見せる。珍しい表情を見せる──いや、これは。
「その……ごめん、」
二十一歳の誕生日、おめでとう。
今更でごめんと言いたげな弱弱しい語調は、その表情は、私が初めてあなたと喋った時と同じものだ。鮮明に覚えている、二年前の入社日に初めて挨拶した時の先輩だ。
私なりの運命を初めて感じた、その日だ。
左斜め前からすごすごと伸ばされた先輩の手は、あの日からずっと取りたかったもので。握りたかったもので。だけど慎んでいたものであって。でもそれは先輩だって同じなのだろう。先輩は用意周到に完璧を演じようとしながら、それでも不完全に、だけど何故か感じることには十全に、これまで殆ど存在しなかった私との時間を努めて作ろうとしてくれている。今になってどうして──とは、きょうは考えないでおこうと思う。先輩と距離を置くことに決めた一年前の出来事も今日だけは存じ上げない──先輩がその気ならば。代わりに私はもう一度だけ、運命のはからいを好きになってやることにした。
そうすれば、今日をまた運命を感じた記念日にできる気がしたのである。
ああ、緩んでしまうなあ。色々と。
「あっ、……すみません」
思わず伸ばした右手と先輩の右手とでは身体の向きが噛み合わず、慌てて先輩の左側へと移動する。背後から微かに電車がレールを擦る音。路地はすぐに低い住宅が席巻する、ここ一年で見慣れた空間へと移っていった。二人だけの世界へと移っていった。
上等だ、この左手に──先輩と繋いでいない方の手に、先輩との時間は絶対に渡してやらない。無意識のうちにショルダーバッグに入っていた例の物も、バッグごと投げ捨ててやっても良いくらいだ。ヤケとも言いうるそんな気持ちに突っ張ったまま、私はランチに食べたいものを次なる話題に挙げることで、この世界をさらに二人だけの甘美なものに構成していくことに決めた。
「今は海鮮の気分です!」
玲奈先輩を殺すなんて、やっぱり私には──
それからは、丁寧に、流れるように。
「店の周りあまり人いなかったのに、結構混んでますね!」
「実は食べログの星4.5ついてるからね」
「あっ私この二色イクラ丼ってやつがいいです!」
「イクラって二色あるんだ。あってか勿論おごるね」
「えっいいですよ! いつも申し訳ないですし……」
「私今実家だからお金貯まる一方なのよ。だから奢らせてよ~あっすみません、とりあえず生ひとつ!」
「ちょっと昼から飲まないでください!」
「昼と言っても休日だよ?」
「休日と言っても目の前に後輩がいるんです! てか本当に昼ごはんくらい出させてください、これからもお出かけするってなったら毎回払ってもらう訳にもいかないじゃないですか」
これからなんて、次はいつ訪れるか分かったものじゃないのに。
聞き覚えのある平成末期のジャズソングが、木製の店内をやんわりと温めていったのが印象的だった。
やんわりと、流れるように、残酷に。
「やっぱりノンアルだと満足できないね~」
「もう店出てるのにまだ言ってるじゃないですか。夜の楽しみに取っておいてください。てか、ここの裏地にこんなおしゃれな古本屋あったんですね、全然知りませんでした」
「茉希ちゃん本好きだったよね」
「社会人になってからは積読が増える一方ですけどね……高校の時、部活入ってませんでしたし暇だったんですよ」
「あっ見て! 太宰の新刊出てる!」
「太宰に新刊とかあるんですか」
「太宰の全集の八巻だけ売ってなかったんだよずっと。七巻までは幸せそうだったのに九巻で急に人間失格とか言い出して間に何があったんだって私気になってたんだ」
「え、先輩も結構本とか読まれるんですね! 趣味同じなの知りませんでした」
「……あ、その、結構昔ね」
「あー、先輩も忙しいですもんね。本読む時間とかあまりないか」
「いや、読むって言うか書いてたんだ。小説、的な」
知らなかった先輩の一面が、どんどん垣間見えてくる。
嬉しい反面、取り返しのつかない何かが剥がれ落ちていくような感覚に襲われて。
私はもう明日からも後戻りできないのだろうと、そう思う反面で、この世界の明日というのがどうなっているのか、つゆほども想像がつかない。
明日からも先輩と同じ職場で、素知らぬ表情で子どもたちの相手をできる気がしない。
それほどまでに──
世界はきっと、今日で行き止まりなのだ。
その後は、
寂れすぎてて一人では入る勇気の出ない、レンタルビデオ屋に突撃してみたり、
ショッピングモールの屋上でやっていた北海道フェアを物色してみたり、
そして小休憩で郊外の公園のベンチへと座り、数人の小学生がサッカーボールを追いかけているのを眺めていると。
「あ、雨だ」
「うそー、予報には無かったのに!」
「この辺での用事も済んだし、一旦家戻ろっか。ちょうど十分後に電車来るし」
「あ、そ、そうですね。その……」
「ん?あー家って私の家じゃないよ。ゴリゴリの実家だし普通に両親いるし、茉希ちゃん気まずいでしょ」
「気まずい、ですかね」
「茉希ちゃん家って前……って言ってももう一年前か、入居する時に見学した以来だよね。お邪魔しても、大丈夫かな?」
「え、も、もちろんですよむしろうれしいです! でもやばい、片づいてたっけな……」
「ありがとう! とりあえず電車乗ろっか──あれ」
「え?」
「ほら、手」
「あ……」
先輩の手の温かさに未だに慣れないまま、こんなこともあろうかとばっちり朝数時間かけて掃除してきた自室のことを思う。
こんなこともあろうかと。こんなことでもあって欲しいと。
先輩が、私にとっての世界へとすっかり戻ってしまったのだと実感しながら、誰もいない路面電車のシートへとならんで座りこむ。
もう二年近く前、入社したての頃もそうだった。玲奈先輩の事しか見えなくなって、独り暮らしで誰もいない天井を眺めるのがとにかく落ち着かなかったのが懐かしい。
路面電車は昼下がりだからか、私達が乗っているのに気づいてないんじゃないかってくらい運転が乱暴で、窓の向こうの雨音すら聞く余裕がなかった。
「ごめんなさい、家に何もなくて買い出し付き合ってもらっちゃって」
「いいよ、どうせ私好きなお酒買いたいし」
「先輩、セブンとか行かれるんですね」
「私を何だと思っとるんじゃ」
「なんというか、そういう現実的な場所に現れるイメージが無くて」
「ふだんの個別指導センターは非現実的ってことなのかな。まー、確かに茉希ちゃんとこんなプライベートで長時間いることそんなになかったしね」
「シラフの状態で、ですね」
「はは、そうだね──あっ見てこれセブンのチョコチップクッキー。これマジで美味しいから茉希ちゃんの分とで二箱買うね」
「へー、私存在を知らなかったです」
「それは人生損してるなあ、まあ私も一人で生活しないようになってからはこんなの買わなくなったけど」
お酒やスナック菓子、飲み物などを買い込み、その後はせっかく家に行くのだし料理をしよう、ということで歩いて数分のスーパーへと向かった。私の作る料理が、玲奈先輩の口に入る。そう思うと尚更、明日以降の事なんて想像するに難くて、ここ最近よく作っている鍋を今日も振る舞おうと思っていたのだが、ふだんひとりでは絶対に買わない高めの牛肉を買った。先輩がレジの間際で買い物カゴにショートケーキを入れ込んだのを見て、ああ、そういえば──もはやきょうが私の誕生日なことなど、どうでも良くなっていた。
そうして、重いレジ袋を提げて民宿「とづか」へと辿り着き、いつもはこの夕方ならば居間から顔を出してくれる戸塚さんも今日は寝ているのか音沙汰がなく。
私の六畳一間のプライベート空間に玲奈先輩が立っているという光景は、いちど俯瞰してしまうと頭がおかしくなりそうなくらい、非現実的であった。
人生においても類をみない、一瞬で流れた六時間。けれどそれは、断片のかき集めであった高校生活とも、仕事と独り暮らしに慣れるので必死だった新卒一年目とも、玲奈先輩の亡霊と遊んでいた飛ケ崎での敗戦処理の生活とも異なる。嵐の前のようになだらかに過ぎて、残酷なまでに濃い思い出を残した。それはいくら穿った私でも、
「今日はめっちゃ楽しいです」
二人で作った牛肉鍋をローテーブルで囲みながら、そう言わせるには充分すぎた。
「よかった~。一応、今日は茉希ちゃんのお誕生日を祝う日だからね」
そういう玲奈先輩はすでにストロング・ゼロをロング缶一本あけて頬をほんのり上気させている。今からちょうど二年前くらいにも、玲奈先輩の当時は調布の家で同じように箸を突き合ったのを今でも鮮明に覚えている。
当時とひとつ違うのは、
「茉希ちゃんもそれ飲むんだ。世界で私だけかと思ってた」
「一瞬で酔えるから好きなんですよ」
「うわ~、発言が終わっとる」
私も先輩と同じお酒を飲めるようになっている。
ずっと、こうしたかったはずなのに、ちっとも現実味がない。
少しずつ空いていくアルミ缶をローテーブルに置くカコンという音が響くたび、なんだか泣きそうになる。泣き上戸とかでは無かったはずなのに。
そんな不慣れな感傷にまかせて私は、
「どうして、祝ってくれたんですか?」
「……え?」
同じくまったく不慣れな事をしてしまう。
「去年は、その、何もしてくれなかったじゃないですか」
必要以上に相手の心に踏み込もうとしてしまう。お酒が入ると私ってこうなるのか。人前でお酒を飲んだの、そういえば初めてな気がする。
「新宿からこっちに引っ越してきて、私周りに誰も知り合いいなくて、玲奈先輩だけが頼りだったのに。二十歳になったらお酒飲もうって、前の会社でもなんどか、言ってくれてたじゃないですかっ」
最近は酒を飲むときはきまって独りで、玲奈先輩の亡霊を思い浮かべては満足していたから、こうなってしまった時の繕い方が、分からない。玲奈先輩は持っていた缶を一度あおり、机に置いてからしばらく牛肉鍋をながめていた。
そして、
「ごめん」
と、一言。
「でもね、こっちだって大変だったんだよ、ずっと。まあ……言い訳にならないのは解ってるけど。茉希ちゃん、だいぶ私のこと、嫌いになったかな」
「いえ、全く! そんな事はっ」
嫌いです。
いつもは平気で嘘がつけた私が、当然のように押さえ込もうとしていたその言葉が、
「……きらいです、そういうところは」
流れ出てしまった。
目の前の先輩と一瞬、目が合う。アルコールのせいか既に視界は現実味の無いモヤがかかっている。
先輩は少し眉間にしわを寄せた後、何かを諦めたようにふうと息をつき、
「この私が嫌われたのは、案外初めてかもしれないな」
とぽつりと呟いた。
「……えっと、」
「あのさ茉希ちゃん、これから話す事で、もっと嫌いになって、なんなら今日を最後に離さないようになっても良いから」
儚くも楽しすぎたはずの一日が、私のふとした一言で、心に踏み込もうとして、雲行きが怪しくなっていく。
「前に、どうしてお酒が好きなんですか? って質問に答えたことがあったよね。その時は「お酒を飲んでいない状態が怖いから」とか何とか弁を振るったと思うけど」
「ああ、えと、そんなこともありましたね」
「それはね、より有り体に言い直せば、お酒を飲んでいないと徐々に消えていくぼくを、完全に失うのが怖かったからって事なんだ」
「……」
その、全然有り体になっていない気が。
というか、今、ぼくって──
「茉希ちゃん、ぼくはずっと、仮面を被って生きてきたんだ。茉希ちゃんにずっと見せてきた、それなりに八方美人の秋田玲奈は、取り繕いの紛い物」
玲奈先輩、どうして──
「それは──先輩にも違う一面がある、って事ですか? そんなの、誰だってあるんじゃないですか。だらしない一面を隠して生きるみたいなことは──」
「そういうのじゃないんだよ」
先輩がこんな風に凄む姿を、初めて見た。
「秋田玲奈という人間の器には、ずっとぼくっていう別の人間が住んでいた。何年も何年も何年も。それをなんとか隠しながら、ひとりでお酒飲んでたまにこのぼくが消えていないことを確認するみたいな生き方をし続けてきた──それで良いと思っていた、でも」
茉希ちゃんは、ぼくじゃなくて秋田玲奈に、ずっとついてきてくれた。
「それが辛かった。申し訳なかった。ぼくはぼくを確保する事だけに必死で、茉希ちゃんに正面から本心から何かを返してあげることなんて、できなかった。そもそも本心というのが秋田玲奈としての本心か、ぼくとしての本心か、それすら判断がつけられなかった。もう限界で、いつか茉希ちゃんに打ち明けよう──と思って、今日までが過ぎていた」
過ぎていた、という声はすでに、弱弱しくかすれてろくに聞こえなくなっていた。
「ごめん、ごめんね──今日は、茉希ちゃん、まだやり残したことはないかな。他に何か、秋田玲奈としたい事はなかったかな」
先輩が長い髪をくしゃくしゃに掻いてまで、私に伝えようとしている事を、きっと二割も受け取れていないのだろうけど。
それでも一つ言えるのは──
「ぼくは茉希ちゃんが望む秋田玲奈を、ちゃんと与えてあげられたかな」
どうして、今日こんなに楽しかったのに。ぶち壊しになるようなムードのこと、言うんですか。
せっかく、楽しみにしてきたのに。
──ああ、でも最初に先輩に、酒の勢いで勇み足を踏んでしまったのは、私か。じゃあ先輩も私と同じだったんだ。ずっと誰にも見えないように、悩んでいたんですね。
それだって今日に限って、この食事の場で、言ってくれるなよとは思います──が。
「先輩、顔をあげてください」
「……」
「まだこの鍋の味を聞いてなかったです」
「……え。……あ──っと、その、美味しい!美味しかった! 超美味しいよ! 茉希ちゃん、料理上手なんだね!」
「ありがとうございます。ふふ、何だか無理やり言わせている感じですね」
やっぱり嘉村茉希は──そんな貴方のことが、大好きです。
貴方と出逢えたこの運命が、どうしようもなく大好きです。
そのことばを、お酒の勢いに任せて吐き出してしまおうと、余っていたストロング・ゼロをぐいっと飲み干し、玲奈先輩の方を見ると、視界がどんどん白んでいって──
次にぼくの視界は赤く染まった。
「え」
目の前の後輩は、ぼくのほうに向きなおったと思えば──どこからか取り出したナイフを自分の左手首に突き立てていた。
呆気に取られているうちに、左手を机に置いたまま、ばたっと畳に倒れ込む。
「ちょ、ちょっと!」
ようやく反応が追いつき、机をぐるっと回って、後輩の様子を確認しようとする。
「ま、茉希ちゃんっ」
「その名前で呼んでくれるな」
左手から赤黒いものを痛々しく垂れ流しつつ、茉希ちゃんの身体は跳ね返るようにがばって起き直り。
「まあ、別に間違ってもいないのか。あえて世界の運命的に言えば──今の私はさしずめ夏川茉希なのだからな」
ちょっとだけ懐かしく、だけれど今の瞬間にあっては一番聞きたくなかったあの強弁が、後輩の口から発せられる。
「という訳で、玲奈君。「夏流離譚」計画は秘密裏に、最終段階へと進みつつある。夏へと行く前に」
もう一度、君と話がしたい。
あの夏と同じセリフを、馬鹿馬鹿しくも夏川はぼくに放つ。
(続)
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