第146話 ホテルで、2人っきり
天井のシャンデリアから垂れる、淡いオレンジ色の光。いつも止まっているホテルよりも、数段豪華な部屋。
夜部屋に帰るたび、ハーブティーやクッキーなどの備え付けのおもてなし品が補充されている。ランクが高くて、格式の高い人が利用するホテルならならでばのおもてなしだ。
ソファーにウィンを座らせてから、俺が隣に座った。
ウィンの様子を見て、声をかける。
「大丈夫?」
今にも寝ちゃうんじゃないかってくらい、うとうととしている。移動に人がたくさん集まるパーティー。いろいろあって、だいぶ疲れているのだろう。
「ウィン」
「何でしょうか、ガルド様」
「長旅にパーティー、疲れたと思うから休んでいいよ」
「ありがとう、ございます」
俺はウィンをソファーで休ませる傍ら、お湯を沸かす。
この辺りはさすがは雪国といった様子。昼間でも肌寒い傾向が強く、手足がかじかむくらいだ。
ウィンも、時々くしゃみをしたり、鼻水をたらしたりしている。馬車での長旅、せっかくの旅行で体調不良を起こさないように気をつけなきゃ。
こういった高級ホテルは、顧客をもてなすためにいろいろなサービスが用意されている。
いろいろと利用しよう。
「ウィン──」
「なんで、しょうか?」
「先にシャワー浴びてきなよ。疲れてるでしょ」
ウィンは、ぽかんと表情を失った後言葉を返してくる。
「ありがとう、ございます。では、いってきます」
そう言ってウィンは着替えをもってそそくさと浴室へ向かって行った。
一人になって、大きく息を吐く。
ウィン──だいぶ笑顔が増えてきた。
初めて会った時よりも、俺に心を開いてくれているのがわかる。
ちょっと、俺を誘惑しているんじゃないかと思う場面もあるけど……。それを受け入れるかどうかは別として、それだけウィンは俺のことを信頼してくれているということでもある。
とりあえず、ウィンに何か淹れてあげようか。
用意されたハーブティーを、2人分淹れる。試しにかいでみたが、とてもいい匂いをしている。
それなりに、高いものを使っているのがわかる。
香りを楽しんでいたり、部屋のレイアウトを観察していたりしていると、ウィンが風呂から上がってきた。
タオルを巻いていて、純白の肌と胸元が丸見えになっている。風呂上がりで、体が温まっているのも相まってとても色っぽい。
「よかったら、飲みなよ。俺、シャワー浴びてくるから」
「あ、ありがとうございます」
そう言って、ウィンがハーブティーを受け取ってちょっとずつハーブティーを飲んでいく。
「か、香り高くておいしいです」
「それは良かった。じゃあ、シャワー浴びてくるね」
そう言って、タオルをとって浴室へ。
身体を洗って湯船につかる。一人の空間になって、大きくため息をつく。
ウィン……大変だっただろうな、今まで。
俺の隣にいて、いろいろなことに巻き込まれて……。
ずっと俺に尽くしてくれた存在。苦労を掛けてきてしまった分、尽くさないと。
そしてこれから……。旅行中に、というか以前から考えていた。
やっぱり、しっかり言おう。
湯船から上がって、部屋に戻る。
そして、俺がソファーに腰掛けると、ウィンはまるで子猫のように俺にすり寄ってくる。
「ウ、ウィン……」
「一生、こうしていたいくらいです」
すりすりと体や豊満な胸を寄せながらつぶやくウィン。
ウィンの柔らかい体が当たって、ドキドキが止まらない。
「待ってくれ、さすがにやりすぎ」
「そんなこと、ないです」
そう言ってさらにウィンは、おっぱいをすり寄せてくる。
俺の背中が、ウィンの軽く押しつぶされ、理性が吹き飛びそうになる。
まずい、何とかしないと。
周囲をきょろきょろと見る──。あ、あれなんかどうだろうか。
備えてあった、机の上に置いてあるタルトに気が付いた。
「とりあえず、疲れもあるしいったん落ち着こう」
「はい……」
そして、タルトの入っている皿を机に置くと、ウィンが何か物欲しそうに言葉を返してきた。
「その……よかったら、食べさせてほしいです」
胸を寄せながら、上目使いで頼み込む姿に、理性がぐらついてしまう。
すごい恥ずかしいけれど、せっかくウィンと二人っきりになったんだ。
今日くらいは、許そうと思う。
「え……わかった。特別だよ」
「あ、ありがとうございます……ガルド様」
ウィンの目が、きらきらと輝く。
「じゃあ、いくよ……あ~~ん」
小さい皿に乗っているタルトを小さくフォークで切ってそのフォークに刺し、ウィンの口元に運ぶ。
ウィンは顔を赤くしながら口を開け、唇を差し出した。
淡いピンクで色っぽい唇が見える。
ゆっくりとフォークを差し出し、ウィンに近づけるとウィンはゆっくりと口を動かして料理を召し上がっていく。
美味しそうに口に入れて咀嚼した後、大きく息を吐いて甘い息をウィンは漏らす。
「とっても香り豊かで、甘くておいしい……です」
「それは良かった」
今度はハーブティーだ。だいぶ熱い、ウィン──ちゃんと飲めるのかな?
優しく渡すと、じっと見たウィン。
「ふうふうして、ください」
まあ、やけどしちゃうよね……。
リクエストに応じて、何度かハーブティーをふうふうした後ウィンに渡すと少しずつ口にしていく。
「香り豊かで、とってもおいしいです」
確かに、ハーブティーはかなり高いものを使っているのだろう。
俺の方にも、とても豊かな香りが漂ってくる。
少し時間はかかったが、ウィンはハーブティーをすべて飲み干した。
それから、ウィンの肩に手を置いてからいろいろと話し始める。
俺に、体重をかけてきて今までのことを話してくる。
「ガルド様と一緒にいて──私は変わりました」
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