第145話 パーティー


 香水類を売っている店に、地域の食品を取り扱っている商店。特産品の、タラという魚料理はとても美味しかった。


 それと、地域一番の大教会へと足を運んで行った。

 信仰深い人が多いのか、多くの人で場所はごった返していた。


 みんなで一緒に、祈りをささげていると連帯感が生まれるような感じがした。彼らも、こうしてみんなで祈って一つの神様を信じる人であるという一体感を無意識のうちに得ているのだろうか。


 さらに、洞窟散策。光が無く真っ暗な道となる。

 そのため同行していた冒険者数人が明かりを照らし、足元が見えるくらいにはなった。


 薄暗い鍾乳洞の道を、足場に気を付けながら俺たちは進んでいく。

 無数の成長した鍾乳石と石筍がきれいに見え、どこか神秘的に感じる。芸術といっても過言ではない。





 それから、ホテルに入って一泊。

 次の日も街をゆっくりと歩いた後、さらに次の日。郊外の針葉樹の森を散策した後、いったんホテルに戻って休憩、その後街一番の大きな城へ。


 パーティーに参加するからだ。これが、ここに来た大きな目的の一つ。


 王都にいるとき、国王様に言われたのだ。馬車代やホテル代を一部負担する代わりに、王国で行われる冬至のパーティーに参加してほしいと頼まれたからだ。そして、商談や政治に関する内容を報告してほしいと。


 その時に、ウィンのドレスも作ってもらった。そう言った手前、行かなきゃいけないのと、こういったパーティーでいろいろな人と接してみたいというのもある。


 もし情勢が変わって、俺たちが王都を追い出された時、再就職先候補になるという理由もある。


 なんにせよ、好印象を持ってもらうのに越したことはない。着替えの部屋で、ドレス姿になったウィンが恥ずかしそうな表情で話しかけてきた。


「どう、ですか?」


 その姿に、ごくりと息を飲む。

 白を基調としたかわいらしいドレス。肩が露出していて、とてもセクシーでかわいい。


「ウィン、とっても似合っていてかわいいよ」

「あ、ありがとうございます」


 ウィンの性格に、とても似合っていると感じる。

 そして、会場の中へ。


 ウィンは、緊張しているのか俺の隣で俺のスーツをぎゅっとつかんでいる。


 初めて会う人ばかりなので、緊張しているのだろうか。


「大丈夫、俺が隣にいるから、安心していいよ」


「ありがとう、ございます」


 俺の言葉にウィンは安心したのか、スーツを握る手が緩くなったのを感じる。


 会場の中には、正装を着た人が何十人もいてすでにパーティーは始まっている

 みんな、整った服装、整った身だしなみ。身分が高い人だというのがわかる。


 入り口で、メイドの人からドリンクが渡される。


 ウィンはぶどうジュース。

 俺は白ワインを片手に、同じく招待された人と話始める。


「王都での活躍きいてるよ。大活躍してたんだって?」


「英雄じゃん。俺たちがピンチになった時は、力になってくれよ」


 やはり、俺たちのことはみんな知っていらしく、ゆっくりする暇もなくみんな俺たちのところに寄ってきた。


 そして、俺たちが休む間もないくらい人々が俺たちに寄ってたかってくる。

 挨拶から、身分を紹介に入り互いに職業のことを話す。


 この国の役人に貴族、大商人──それなりに身分がある、いろいろな人がここに来ているというのがわかる。


「これから、あんたんとこでも商売をしようと思っていてな。名前覚えてもらえると助かるぜ」


「ガルド君だっけ。名前覚えておくよ」


 俺たちは机にあるフィッシュアンドチップスやチキンを口にしながら談笑をしていく。

 やはり、商人や国の運営に携わるものらしく、自分の事業を俺たちに紹介してきた。


 これなら、色々なコネが作れそうだ。帰って、国王と話してみよう。これから、この国と友好関係を築いたりするのに必要だ。


 とはいえ表向きでは協力すると好意的な態度を示しながらも、そこはしたたかな商人や政治家といったところ。

 さりげなく見返りを要求してくる。

 自分たちが作った武器を、定期的に購入してくれと頼むもの。

 よくわからない事業を通して、税金の横流しを求めるもの。


 中には、露骨に賄賂を要求してくるもの。

 状況に応じて、やんわりと断ったりできないと言ったり──。

 とにかくいろいろな人に詰め寄られて大変だった。


 中には──。


「ウィンちゃん、スタイル良くてかわいいねえ。この男を捨てて、俺様に乗り換えちまわないかい?」


 そう言ってウィンの胸を触り始める商人の男。



「ウィンちゃんだろ。ガルドさんのこれ」


 そう言っておじさんは、ノリノリで小指を立ててくる。

 ウィンにちょっかいを出してくる人たち。

 それらの人を、気分を損ねさせたりもめごとにしたりしないように、何とか対応していく。


 流石にここで、電撃を使うわけにはいかない。



「やめてください……」


「こんな場ですし、ウィンも嫌がっているんでるのでこれくらいで……」


 優しくやんわりと断りを入れて、何とかことを納める。確かにウィンは魅力的だけど、セクハラはごめんだ。


 ウィンも、いろいろの人に話しかけられていた。

 時間がたつごとに、疲労の表情が出てきているのがわかる。あとでゆっくりと、休ませてあげよう。数時間ほどたって、ようやくパーティーがお開きになり、俺たちはすぐにホテルへと戻った。

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