第111話 素敵な、服装

「すごいきれいで、ウィンによく似合っているよ」


 嬉しそうに、顔を赤くして言葉を返してきた。


「あ、ありがとうございます。じゃあ、これにしようかと思います」


「了解」


 これで水着は決まった。

 それから、せっかくなのでバカンスっぽい服装をさせてみる。


「ウィン、こんなのよさそうじゃん。レンタルしてみない?」


「してみます!」


 ウィンにはつばの広い麦わら帽子に、俺はサングラスをレンタルで借りる。

 それなりの金額にはなったが、ウィンが喜んでくれたからからいいか。


 日々の疲れをとるためにバカンスに来ているんだ。今日は、精一杯楽しもう。

 親指を立てて、ウィンに言葉を返す。


「ウィン、かわいいよ。とっても似合ってる」


「あ、ありがとうございます」


 とはいえ、泳ぐにはちょっと邪魔そうだ。海に入るときは、椅子に置いておこう。

 そして俺たちは、砂浜へ。それから、ゆっくりと海水に浸かった。

 大体、ウィンの腰くらいの深さまで

 泳いだり、ばちゃばちゃと海水を掛け合ったり──。

 海自体は街にはあるが、こうして海の中に入ってはしゃいで遊んだりするのは初めてだ。


 あっという間に、1時間くらい経ってしまった。

 ずっと体を動かして疲れたので、休憩。近くにあるこれまたコテージのような雰囲気をしている休憩所に足を運んだ。


 海を眺めるように、リゾート用の傾斜のついたベンチがあって、偶然隣り合わせに2人分開いていた。


 俺とウィンが、そこに座り込む。小屋の中には、売店のようなものもあり、ブーメランみたいな形をしたパンツをはいたお兄さんが飲み物やフルーツなどを販売していた。


 売っているフルーツがのっかったジュースを興味津々そうに見ているウィン。

 そっと肩をたたいて、話しかける。


「お腹すいた? あれ、飲んでみない?」


「はい、飲んで見たいです」


 目をキラキラと輝かせながらウィンが言葉を返す。だったら決まりだ。


 一緒に受付の場所まで行く。「いらっしゃい」とお兄さんに声をかけられ、注文を頼む。

 飲み物は、トロピカルジュースというらしく、いろいろなフルーツが入ったジュースの上においしそうなフルーツが乗っかった飲み物だ。


 それと、オレンジのドライフルーツを頼んだ。隣では、別のカップルがトロピカルジュースを受け取り、大きな声をあげて喜んでいた。


「すごい、初めて見た。とってもおいしそう」


「だね、早く席について一緒に食べようね」


 そして、金髪の女の人がひげを生やした男の人のほっぺにキスをした。

 俺とウィンが、そんな姿を見て思わず顔を赤くしてしまう。俺たちも、外から見たらあんな熱々なカップルに見えるのだろうか。


 そんなことを考えていると、お兄さんが注文したトロピカルジュースとドライフルーツを持ってきた。


「カップルさん、はいよ」


 その言葉を聞いて、ウィンは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。やはり、面と言われると恥ずかしいんだな。


 俺がお代を払って商品を受け取り、ウィンと一緒にさっき確保した席へ。

 トロピカルジュースとドライフルーツを食べながら、海を見る。


 かわいい女の子2人が、波打ち際でバシャバシャと海水をかけ合いながら遊んでいた。


 ビキニっていうんだっけ。露出度が高い 大き目な胸、きゅっと引き締まったお尻。

 思わず一瞬だけ視線が行ってしまった。


 ウィンがすねた顔をしてぷくっと膨らませる。

「ごめんごめん」


 慌てて軽く頭を下げた。ウィンは、まだ不機嫌そうな表情をしている。

 気を付けないと──。ウィンを困らせないようにしよう。


 目移りを修正しようと目をぱちくりしていたその時──。


 トントン。


 誰かが肩をたたいてくる。振り向くと、麦わら帽子をかぶった白いひげのおじさんがいた。


「おおっ、カップルさんかい。かわいい女の子、お似合いだねぇ」


「あ、ありがとうございます」


「でもさ、日焼けとか大丈夫? そこの女の子」



 ウィンも、腕のあたりに視線を向けながらつぶやいた。

「確かに、強い日差しです」


「でしょ? それならこれ売ってあげるよ。安く売るからさ、使ってみない? 日焼け止めの秘薬」


「へぇ、日焼け止めの秘薬があったんだ」


 確かに日差しは強い。女の子だと、肌を痛めてしまう可能性がある。そこまで高いわけでもないし、日が沈むまでにはまだ時間がある。


 女の子だけに肌は大事だ。もうちょっと、そういう所も気を使ってあげればよかった。

 とりあえず、買ってみよう。


「わかりました、売ってください」


「あいよ。銀貨2枚ね」


 そういっておじさんに銀貨を渡す。おじさんは、手に持っていた茶色い瓶をこっちに手渡ししてくる。


「塗るタイプの薬だからね」


 おじさんから、日焼け止めの使い方を聞く。どうやら1人でもできないことはないが、1人だと背中で届かないところがあるので別の人に塗ってもらった方がいいらしい。


 まあ、この場ではそれができるのは俺しかいない。


 俺がやらなきゃいけないのか──。

 そして、そばにある備え付けの木のベンチにウィンはうつぶせになって寝っ転がる。


「じゃあ、塗るよ」


「わかりました。よろしくお願いします」


 すると、なんと背中にあるひもをほどき始めたのだ。背中が、丸見えになっている。

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