第112話 オイル塗り、そして──

「わかりました。よろしくお願いします」


 すると、なんと背中にあるひもをほどき始めたのだ。背中が、丸見えになっている。

 もし、このままウィンがこっちを向いたら──生まれたままの上半身の姿のウィンが丸見えになってしまう。


 そう考えるだけで、ウィンから視線を背けそうになるくらい恥ずかしくなる。


「オイル、塗ってください。背中の届かないところ、お願いします」


「わ、わかった」


 仕方がない……ウィンが、望んでいるんだ。


 瓶からサンオイルを少量取り出し、自分の手のひらで薄く延ばす。


 ウィンの背中に触れる。絹のように滑らか。

 柔らかくて、とっても色っぽい。ずっと触っていたいとさえ思えるほどだ。

 それも、ただ塗るだけじゃない。ムラが出ないようにまんべんなく、それと、ウィンの繊細な肌を傷つけないように優しく──。


 やっぱり、ウィンの肌は触れているだけで気持ちいい。もし、誰もいない2人っきりの空間だったら一線を越えていたのだろうか──。

 ウィンの小柄な体型だけあって、すぐに塗り終わった。


「これで終わりだよ、ウィン」


「ありがとうございます。じゃあ、お腹も──」


 そう言ってウィンはくるりと体制を変えてきた。


「まって、今」


 慌てて肩を掴むが時すでに遅し。


 忘れていたのだろう。そう、今のウィンは上の水着を脱いでいる。必然的に起き上がった瞬間にはらりとウィンのおっぱいを押さえていたものが取れ、地面に落ちてしまう。


 本能的に、その場所に行く。おっぱいが、見えてしまっている。真っ白で大きくて、柔らかそう。形も、釣り鐘型でとても美しい。まさに男の描く理想がそこに存在していた。思わず、視線が吸い寄せられてしまう。


「あっ──」


 ウィンは気づいたのかすぐにおっぱいを手で隠すが時すでに遅し。


 すでに、ウィンの豊満なそれは俺の脳裏に焼き付いてしまっている。

 ウィンは、恥ずかしがっているのか顔を真っ赤にしてうつむき、コクリと頷く。


「見えて、しまいましたね」


「うん、見えちゃったね」


 すぐに周囲に視線を配る。みんな、それぞれバカンスを楽しんでいる。みんなと海岸でわちゃわちゃしていたり、砂浜で肌を焼いたりしていてこっちのことは無関心といった感じだ。

 ラッキーだった、ほっとする。そして、水着を付けた後お腹周りを2人で塗って準備は完了。


 再び砂浜ではしゃいだり、海に入ったりする。



 本当に目いっぱい遊んだ。


 海に入って、波に乗っかって揺れられたり、波にのまれたり──。

 ウィンは心の底から喜んでいるのがわかる。


 面々の笑みで、手をつないで一緒にいて──。

 笑顔で、俺と一緒に遊んでいた。


 時間を忘れるくらいはしゃぐ。時には休憩も兼ねて、砂浜で寝っ転がったり。ウィンがうとうととうたた寝をしていると、必ずこっちに寝返りを打ってくる。


 俺は寝返りを打ってきたウィンの全身を、優しく抱きしめた。

 すぅすぅと、寝息を立てているウィン。とっても気持ちよさそうだった。


 しばらくすると、俺に抱かれながら寝ていたウィンが目を覚ます。目が合った瞬間、目ぼけて目が半開きなウィンと視線が合った。


「疲れは、大丈夫?」


「大丈夫です」


 けだるそうな表情で目をこすりながら言葉を返すと、俺の胸板をそっと押してから再び海に視線を向けた。


 物欲しそうな表情をしているウィン。肩にそっと手を置いて、話しかけた。


「じゃあ、またあそぼっか」


 ──はい!


 それから、しばらくたって、日が暮れてきた。さすがに、ずっとはしゃいで疲れた。


「そろそろ、宿に戻ろうか」


「わかりました」


 周囲の人たちも、みんなコテージに戻り始めている。俺たちも戻って、夕食の準備をしよう。


 そして、再び宿に戻る。

 さっきは急いで海に行ったので特に何も思わなかったが、まじまじと与えられた部屋を見て感じた、ここは珍しい形式の家だ。


 中は、木でできているコテージのような別荘のような部屋。


 部屋は、大きな部屋の中にベッドに食事用の机といすリビングなどがまとまっている感じ。

 新鮮で、物珍しさがある。



 それから、食事の時間となる。食べ物は、帰るときビーチの人から買っておいた。


 冷たい氷の入った木の箱を開けると、今日の食事が現れる。


「これ、全部生ですよね」


 入っていたのは、程よく脂がついていそうなカットされた肉に、ジャガイモやキャベツ、魚の切り身。それから、木のジョッキに入っている油。

 それから、ちらりと部屋の隅に視線を向けた。


 そこには、両手で抱えきれるくらいの量の薪木、それから鉄板と火を起こす用具。


 そう、支配人から指定された食事はなんと、バーベキューだった。

 砂浜で海を見ながら、バーベキューをするようにと指示されたのだ。


 俺もウィンも、バーベキューの経験はある。高級料理もいいけれど、こんなのどかな雰囲気で波の音を聞きながらというのも悪くない。


 そして、俺たちは砂浜に出る。夜も更けて、すっかり真っ暗な砂浜。

 そこで、俺たちはバーベキューをすることとなった。


 遠い砂浜では、団体客がいるのだろう。


 バーベキューの火に囲まれながら、集団で聞いたこともない歌を歌っていたり、海を酔っぱらいながら泳いだりしている。


 はしゃいでいる人もいるし、別の場所には恋人同士らしき人が隣同士で座ってじっと海を見ている。


 せっかくのバカンスなのか、みんな思い思いに楽しんでいるのが理解できる。


 俺たちも、この人たちに負けないくらいウィンと楽しく過ごそう──。


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