第15話 悲しい、考え

 ウィンは、うつむきながらつぶやいた。


「私、考えたんです……」


 考えてみれば、ウィンは今までずっと不憫な目にあってきた。

 そんな彼女を、俺はずっと1人にしてしまった。


 孤独の中で、ネガティブな考えになってしまったのだろう。


「ガルド様は、私のことを拾ってくれて……、一緒にいてくれました。なのに私は……なにも出来なくて」


 悲しそうな涙目の表情。返す言葉か浮かばない。



「家事とかだけじゃ、釣り合わないですよね? だから、こうすれば──釣り合うと思って……」


 そしてウィンは俺に向かって倒れこむ。俺の体はウィンに押し倒される形となり、そのままベッドに倒れこんだ。


 上からウィンが、俺の胸板に胸を押し付けるような形で迫ってきた。

 豊満な胸がプルンと当たる。

 目に涙を浮かべた上目使いで、俺を見つめてきた。



「私の身体──どうですか? 言われるんです。スタイルがいいねって」



 誘惑に屈してしまいそうになる。少しでも胸に触れてしまえば、もう取り返しがつかないところまで行ってしまうだろう。


 それくらい、俺にとってウインの体つきは魅力的だ。


 年齢離れした大きな胸はもちろん、幼い顔つき。

 柔らかそうな肌。キュッとしたくびれ。体のすべてに、俺の欲望を刺激する魅力がこれでもかと詰まっている感じだ。


 けど……。


 目をつぶって、びくびくと体を震わせている。

 恐怖に震えているというのが、すぐに理解できた。


 そしてそれと同時に──悲しい気持ちになる。


 ウィンはかわいくらしい顔つきで、スタイルも他の女の子と比べても抜群にいい。



 恐らく、今までウィンに近づいた人たちはみんなそういう事を要求していたのだろう。

 そして、身体ばかり求められているうちに、こういう思考にたどり着いてしまったのだろう。


 身体を差し出せば、喜んでもらえると──。


 ウィンは、性格は人見知りで優しい性格なのだろう。

 せめてもの罪滅ぼしとして、ウィンなりに考えた結果、こんな選択を取ってしまたのだろう。


 今まで出会ってきた人物がみんな、それを目当てだったことを知っていたから──。

 そんな、恐怖に怯えた表情を見て、出した答えは一つ。


 それが、これなのだろう。


「いいですよ……私の初めて。あげても」


 そう言いながらウィンは俺に胸を強く当ててくる。


 俺の体にウィンの胸がプルンと強く当たる。

 柔らかくて、とてもエロくて、思わず息を呑む。


 一瞬だけ、欲望に身を任せたいという感情がわいてくる。


 もし、ウィンの胸に手をかざしてしまえば、もう戻ることができないところまで行ってしまうだろう。


 そのくらい、ウィンの体つきは俺にとって魅力的に見えた。

 そして、その体を差し出してもいいと言ってきたのだ。


 欲望への本能と同時に一つの感情が心の底から湧いてきた。

 悲しいという感情。


 まだ17歳で、頼れる人もいない。

 そんなウィンが何とか俺に尽くそうとしているのだ。


「やめてくれ。そんなことしたって、悲しくなるだけだから──」


「でも、私──ガルド様の役に立てなくて……」


 しょんぼりとした顔つき。見ているこっちが悲しくなってしまう。

 そんなウィンに、出した答えは──1つだった。


 ぎゅっと抱きしめて優しく頭を撫でる。

 ウィンの髪をほぐす様に……。



 ウィンへの欲情よりも、もっと隣にいてあげたいという気持ちの方が勝っていた。


「ウィン……」


「なんでしょうか」


「大丈夫。ウィンは、俺が幸せにするから……」


 そう言ってぎゅっと抱きしめ続ける。


 ウィンは、ただ「ありがとうございます」と言って俺の体をぎゅっと抱きしめ返していた。

 腕を握る指の力が、心なしか強く感じた。


 当然と言えば当然だ。家族のため、一人でこの街に出て、頼れるものは何もない。

 俺が、彼女にとって最後の存在なのだ。


「大丈夫。俺は、絶対にウィンを、見捨てたりしない。だから、もっと自分を大切にしてね」


「……ありがとうございます」


 ウィンの目に、うっすらと涙が浮かんでいた。


 ウィンと出会って日は浅いし、何日も家を開けて一人にしてしまった。

 俺に心を開いてくれているとはいえ、まだウィンは完全に俺のことを信じ切ったわけじゃ無いと思う。


 いつの日かウィンが、俺を信じ切ってくれる日が来るのだろうか。


 そして、今日もそのまま一緒の布団で寝る形となった。ウィンが、そのまま眠ってしまったからだ。


「ガルド様、行かないでください……」


 寝言をつぶやくウィンの瞳から、うっすらと涙がこぼれている。


 俺は今まで仕事一筋で、真面目さだけが取り柄だった人間だ。

 恋愛経験なんて全くないし、モテたいなんて考えたこともなかった。


 けれど、ウィンのことは何としても守り抜きたい。

 上手くいくなんて保証もないし、嫌われてしまうかもしれないけど、全力で彼女のために尽くしていきたい。


 そう強く、心に誓った。



 翌日。



 疲れもたまっているし、今日は休み。家事をして軽く昼食をとってから街へと出かける。

 今日はウィンと一緒にお買い物だ。

 ちなみに、買い物が終わったら軽く街をふらふらすることとなった。


 ある意味では、生まれて初めてのデートなのかもしれない。



 部屋を出た途端、ウィンが申し訳なさそうな表情で話しかけてきた。


「ガルド様」






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